新体制ミランのメルカートは?
ミランは2025/26シーズン最終節、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を土壇場で逃す結果に終わった。その直後、クラブはマッシミリアーノ・アッレグリ監督とジョルジョ・フルラーニCEO、イグリ・ターレSD、ジェフリー・モンカダTDの退任を発表。この粛清を境に、新たなフロント作りに動いたが、最終的にはオーナーであるジェリー・カルディナーレ自らが陣頭指揮を執る体制へと移行した。ミランは、ルベン・アモリム新監督が目指す理想のスタイルをオーナーが支える体制のもと、新しい時代へと動き出した。
9月1日に閉幕したカルチョメルカート。大型補強と迷走した人員整理が同居した2カ月間を、現地メディアの評価もあわせて総括する。
今夏の主な獲得と放出
| 区分 | 選手 | ポジション | 移籍元/移籍先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| IN | ゴンサロ・ラモス | FW | PSG | 完全移籍 |
| IN | マリオ・ヒラ | DF | ラツィオ | 完全移籍 |
| IN | サンクン・ディアワラ | DF | トロワ | 完全移籍 |
| IN | ディエゴ・モレイラ | MF/FW | ストラスブール | 完全移籍 |
| IN | オマリ・ハッチンソン | FW | ノッティンガム・フォレスト | OP付きレンタル |
| IN | アンドレイ・コスティッチ | FW | パルチザン・ベオグラード | 完全移籍後レンタル |
| IN | オレリアン・グルニエ | DF | バーミンガム・シティ | フリー |
| IN | ルカ・モドリッチ | MF | ミラン | 契約延長 |
| OUT | ラファエル・レオン | FW | ガラタサライ | 完全移籍 |
| OUT | クリストファー・エンクンク | FW | ライプツィヒ | OP付きレンタル |
| OUT | サムエレ・リッチ | MF | コモ | OP付きレンタル |
| OUT | サンティアゴ・ヒメネス | FW | ポルト | OP付きレンタル |
| OUT | ユスフ・フォファナ | MF | リヨン | OP付きレンタル |
| OUT | ザカリー・アテカメ | DF | リヨン | レンタル |
| OUT | ダヴィド・オドグ | DF | トゥールーズ | レンタル |
| OUT | イスマエル・ベナセル | MF | ー | 契約解除 |
| OUT | ニクラス・フュルクルク | FW | ウェストハム→ブレーメン | レンタル終了 |
補強ポイント
古典的なイタリアスタイルのアッレグリと対照的に、アモリムは攻撃的なスタイルを好む指揮官で、戦術変更に伴う入れ替えは必至だった。
ポゼッション重視のスタイルであるため、後方からのビルドアップが重要視された。3バックとウイングバックを担う人材の確保も必要。基本的にウインガーを置かないシステムであるため、シャドーポジションの強化も必要とされた。前シーズンに決め手を欠いたセンターフォワードのスケールアップも、同様に求められたポイントだ。
つまり、戦術変更に伴い、大規模な刷新が必要だったことは明らかだ。
獲得した選手たち
カルディナーレ体制は、サプライズとともに始まった。FIFAワールドカップ2026の期間中、ゴンサロ・ラモス獲得のニュースが飛び込み、あっという間にクラブ史上最高額の移籍金による取引が実現して新体制のエースが早々決まった形だ。
その後、守備補強が動き、ラツィオとの契約が残り1年だったマリオ・ヒラを獲得した。こちらはイグリ・ターレ前SD体制のときから動きがあり、新体制移行に伴って一時は後退していたものの、アモリム体制でも必要と判断されて決まっている。
両サイドには特性の異なる2人が加わっている。ストラスブールから完全移籍で獲得したディエゴ・モレイラは、サイドハーフ、ウイング、ウイングバック、トレクァルティスタと複数ポジションをこなせる22歳。もう一方のオマリ・ハッチンソンは移籍市場終盤に獲得が決まったアタッカーで、ノッティンガム・フォレストから買い取りオプション付きレンタルで加入した。
移籍市場の終盤は、センターバック補強の必要性が伝えられ、レッチェのティアゴ・ガブリエルへのコンタクトも報じられたが、最終的には動かなかった。事前の一部報道によると、トロワから加入したサンクン・ディアワラらをアモリムが高く評価しており、現有戦力で回せるという判断だったとされる。
退団、放出したメンバーと人員整理の混乱
放出面では、完全移籍で去ったのはラファエル・レオンのみで、カルディナーレが望んでいた金額を下回る3800万ユーロでの決着となった。クリストファー・エンクンク、サムエレ・リッチ、サンティアゴ・ヒメネス、ユスフ・フォファナはいずれも買い取りオプション付きレンタルでの放出にとどまり、ザカリー・アテカメとダヴィド・オドグもレンタルで送り出されている。イスマエル・ベナセルは契約解除でクラブを去った。
人員整理をめぐっては、市場最終日に大きな混乱があった。
アモリムはプレシーズンキャンプにおいて、レンタルでクラブを離れていた選手を含めて自分の目で判断したい意向を示し、多くの選手をチェックした。その結果、チュクウェゼやユヌス・ムサのように、ミランで序列を上げた選手もいる。
その一方で、一通りプレシーズンを過ごしたあとで構想外となった選手もいる。その筆頭がフィカヨ・トモリで、移籍市場閉鎖までに新天地が決まらなかった。
アモリムは、ヴェネツィア戦前日の会見(8月26日)で構想外選手の放出について「一部の選手は、仮にクラブに残ったとしてもチームの一員にはならない」と明言していた。
ところがメルカート閉鎖後、トモリはチームに再統合。報道によると、監督自ら電話で伝えるという、わずか6日前の発言とは正反対の決断が下されている。同様に、フランス復帰を望んでいたウォーレン・ボンドも交渉がまとまらず残留となった。
現地メディアの評価
市場閉鎖を受け、『Transfermarkt』の集計ではミランの移籍金支出はセリエA2位の1億6660万ユーロにのぼるとされる(1位はユヴェントス)。ただし『カルチョ・エ・フィナンツァ』の試算では、減価償却と放出選手の年俸削減を踏まえた2026/27シーズンの実質的な収支インパクトは638万ユーロの赤字にとどまる見通しで、表面上の支出額ほど財務を圧迫するものではないという。
肝心の評価は賛否が分かれている。『TMW』の補強採点は「7」。「大金を投じたのは事実だとしても、新生ミランは良い仕事をしたという印象。ゴンサロ・ラモスは優れたセンターフォワードで、マリオ・ヒラはすでにセリエAで守備面の実力を示している。モレイラとハッチンソンには大きな注目が集まっている」と評した。
ビアンチン記者も「歪でサプライズに満ちていた」としつつ、トリノ戦やヴェネツィア戦でミランがリスクを恐れず3-2の勝利を目指すような戦い方を見せた点を挙げ、「12カ月にわたるアッレグリ体制下の味気ない食事制限を経て、少しのホイップクリームを味わうような体験」と好意的に振り返っている。
一方、人員整理の面には批判が集中している。ミカエル・クオーモ記者は、「ミランのメルカートが及第点を保てているのは、先発に定着したヒラがトモリよりも強力であり、ゴンサロ・ラモスが近年のFW以外のどの選手よりも優れているからに過ぎない」と補強の質は認めつつも、「大半がローン移籍にとどまり、市場閉鎖時点で3人が構想外のまま残された」と売却面の不手際を指摘した。補強の中身には好感を示しつつ、放出運用のまずさには厳しい視線が向けられている構図だ。
最終診断
補強面では、ラモス、ヒラという核を早期に固め、モレイラ、ハッチンソンで前線の選択肢を広げたことは評価されている。一方でCBの追加補強は最後まで実現せず、中盤も過密日程を戦うには手薄との指摘が残る。左サイドバックの層、ストライカーのバックアップも同様の課題として挙げられている。
トモリやボンドの残留が象徴するように、放出計画の詰めの甘さは今夏最大の懸念材料として残った。開幕から好調な滑り出しを見せているアモリムの新生ミランだが、ビアンチン記者が指摘する通り、真の試練は3日おきの連戦が続く12月から1月にかけて訪れる。
ファンが重視するのはあくまで結果であり、クラブの予算ではない。その意味で、大物獲得はミラニスタたちを大いに喜ばせた(早期の獲得がシーズンチケットの売上に好影響したという意見もある)。ただ、チームをコンパクトにできなかった「ツケ」はアモリムのマネジメントを困難にし、クラブの財政にも良い影響を与えないだろう。
結局は、新戦力がイタリアで活躍できるかが成否のカギであり、実際に輝かせられるかはアモリムの手腕によるところが大きい。補強の採点は、今後の結果次第で良くも悪くもなる。
2026/27ミランのフォーメーション


