モノが違ったモンツァ戦の肉弾戦
インテルは22日に行われたセリエA開幕戦でモンツァに4−1で大勝した。インテルはディフェンディング・チャンピオンとしての強さを十分に見せつけ、新シーズンの優勝候補筆頭であることを改めて印象づけたのと同時に、フランチェスコ・ピオ・エスポジトの成長ぶりにも大きな注目が集まっている。
ピオのキャリア
2005年生まれのピオは、インテルの下部組織出身。2024/25シーズンにセリエBのスペツィアへレンタル加入すると40試合で19ゴールを挙げてブレイクを果たした。2025年夏、インテルに戻ってきたピオは、再びレンタルの可能性も報じられていたが、クリスティアン・キヴ監督のトップチームに残留すると、2025/26シーズンはインテルで公式戦48試合に出場し10ゴール6アシストを記録、セリエA優勝とコッパ・イタリア優勝に貢献した。
代表でも2025年8月にイタリアA代表に初招集され、9月5日のエストニア戦(当時20歳)でデビュー。これまでに9試合で5ゴールを記録している。
2026/27シーズンは、期待が高まる中でのインテル2年目。プレシーズンマッチではゴールを決められず、不安はあった。それでも、開幕戦のモンツァ戦は、圧倒的な存在感だった。
モンツァ戦、1ゴール1アシストの中身
2026年8月22日の開幕戦、キヴ監督はコンディションが万全ではないラウタロ・マルティネスとピオを並べて起用した。
6分、ピオは相手DFロレンツォ・ルッケージのプレッシャーを受けながらゴールに背を向けた状態でボールをキープし、右サイドのアンディ・ディウフへ展開。ディウフのパスからハカン・チャルハノールが強烈なミドルシュートを突き刺し、インテルが先制した。
その後ペースが落ちたインテルは、同点に追いつかれて折り返した。ハーフタイムにキヴ監督は、前線のピオへの縦パスをより増やすようチームに指示したという。
すると、後半はインテルが一方的だった。48分にピオトル・ジエリンスキのゴールで勝ち越すと、55分にはピオが自ら決めた。ディウフがペナルティーエリア右から折り返しにニアに飛び込み、右足のアクロバティックなバックヒールでGKピツィニャッコを破り、3-1とした。
63分には、抜群のポストプレーで走り込んだヤン・ビセックのゴールをお膳立て。これで4−1となり、ピオはこの試合で1ゴール1アシストを記録した。
●インテル対モンツァ【セリエA第1節】:試合後コメント、主な採点、スタッツなど
現地紙の採点と寸評
イタリア主要メディアは、開幕戦のピオにチーム最高クラスの採点を与えた。
ガゼッタ・デッロ・スポルト:8.0
彼の耳にはずっと「確かに落としは素晴らしいが、ゴールを決めなければならない」という言葉が響いていたはずだ。そして開幕戦の今日、彼はそれを見事なヒールシュートでやってのけた。それ以外の貢献も計り知れない。これほどのパフォーマンスを見せる彼を、一体誰が再びベンチに戻せるというのだろうか。
コッリエレ・デッロ・スポルト:7.5
本当に重要な場面で素晴らしいパフォーマンスを披露した。ヒールによるゴールはまさに珠玉の一撃だが、何よりもチームに決定的な違いをもたらしたのは、ゴールに背を向けた状態で行われた彼の果てしないポストプレーの作業量である。
スカイ:7.5
美しいヒールシュートを決めてマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。かつては一人の若手有望株に過ぎなかったが、今やインテルにとって信頼のおける「確信(certezza)」へと昇華している。
Goal Italia:7.5
最前線にそびえ立ち、相手ディフェンダーに決して押し出されることなく、フィジカルで戦い、ポストプレーをこなし、スペースを開けた。先制点の起点となり、その後見事なバックヒールで真の「9番」としての真髄を見せつけた。
スポルトメディアセット:7.5
彼にとって美学に囚われることは重要ではない。泥臭く、実質的に自分ひとりの力で戦い、チームメイト3人分に匹敵するタスクをこなした。
数字に見る進化:ポストプレーの質
実際にスタッツ面はどうだったのだろうか。『Sofascore』のデータを覗いてみよう。
2025/26シーズンとモンツァ戦の比較
| 項目 | 昨季(25/26)平均 | 今季開幕戦 |
|---|---|---|
| 平均評価点 | 6.67 | 7.60 |
| 出場数 | 48試合中スタメン18試合、平均出場51分 | スタメンで90分フル出場 |
| デュエル勝利数・勝率(1試合平均) | 4.8回・勝率49〜51% | 6.0回・勝率67% |
| 被ファウル数(1試合平均) | 1.2回 | 4.0回 |
| ゴール決定率 | 15% | 20% |
| 得点頻度 | 245分に1ゴール | 90分に1ゴール |
| キーパス(1試合平均) | 0.6回 | 2.0回 |
数字の中でとりわけ目を引くのが被ファウル数の伸びだ。昨季は1試合平均1.2回だったのに対し、開幕戦では4.0回。189cmの体躯を生かしたポストプレーに対し、相手DFがファウルでしか止められない場面が増えている、と読める数字だ。
デュエル勝率も約50%から67%へと上昇しており、フィジカルでの優位性が単なる「体が大きい」というレベルから、実際に競り合いで上回れる質へと変わってきていることを示している。
シュートやチャンスメイクの数字にも変化が見られる。ゴール決定率は15%から20%へ、得点頻度は245分に1ゴールから90分に1ゴールへと向上しており、少ない機会をより確実に仕留められるようになった。またキーパス数も0.6回から2.0回に増えており、最前線でボールを収めるだけでなく、周囲を使って決定機を作る役割も担い始めていることがわかる。ビセックへ通した63分のアシストは、この変化を象徴する一本と言えるだろう。
もちろん、相手が昇格組のモンツァであり、これから強豪と対戦したときはもっと苦しむことが予想されるものの、フィジカル勝負で桁違いの強さを発揮していたことは間違いない。
識者・関係者の声
ユルゲン・クリンスマン
私自身、ヒールでゴールを決めた記憶はない。ピオが決めたあのゴールは本当に見事だった。だが、ゴールの話は別としても、彼には巨大なポテンシャルがある。成長の伸び代もまだ十分に残されている。出場時間を重ね、ピッチの上に立ち、自分自身のスペースを切り開くことでストライカーは成長する。若手は試合に出るべきであり、彼らにはミスを犯す機会も与えられなければならない。これは文化や哲学の問題でもあり、その点でイタリアは少し後れを取っている。幸いにもピオはその例外だ。ハーランドは17〜18歳ですでにレギュラーだったが、エスポジトのプレースタイルは少し彼を想起させる。今後、マルクスがスタメンの座をつかむのは容易ではないだろう。(『ガゼッタ・デッロ・スポルト』)
アルベルト・ポルヴェロージ(ジャーナリスト)
自然の力そのもので、決して諦めない。ペナルティエリアでは獅子でありガゼルであり、大理石でありゴムでもある。(『コッリエレ・デッロ・スポルト』)
ダニエレ・アダーニ
すでにルカ・トーニとの比較など、特定の比較がなされている。代表チームで、私は彼のことを『正解を選べる男』と呼んでいる。あの年齢にしては成熟しており、正しいプレーを数多くこなす。インテルの前半は低調だったが、最高のプレーを見せたのはエスポジトだった。ボールを収めて周囲を活かすなど、彼がこなすタスクの質は非常に高かった。
今後の展望:テュラムとのポジション争い
インテルはラウタロ・マルティネスとテュラムがFIFAワールドカップ2026で大会の最後まで戦ったため、プレシーズンの準備がほかの選手よりも遅れていた。
そんな中でスタメン起用されたピオは、結果で期待に応えた格好だ。
これから2人が調子を上げてきたときのレギュラー争いは注目だ。
キヴ監督は「チャンピオンズリーグを含めた過密日程を戦い抜くには、テュラムもエスポジトも両方必要だ」とローテーションの考えを示しているが、クリンスマンが指摘するように、このパフォーマンスを続けばピオをベンチに置き続けるのは簡単ではないだろう。
ピオのポストプレーはラウタロに自由を与え、ウインガー陣の推進力をより際立たせる可能性があり、期待の若手から重要な戦術的なピースへと進化を遂げつつある。
モンツァ戦では、ユニフォームの背番号が剥がれるアクシデントが繰り返され、背番号「94」が時にはテュラムの「9」のように見え、特にはハビエル・サネッティの「4」にも見えた。生え抜きの若手に、インテリスタたちの期待はますます膨らんでいる。

