開幕スタメン抜擢の右サイドがロマニスタの希望に
2026/27セリエA開幕節、ローマはフィオレンティーナを4-0で一蹴した。ドニエル・マレンのハットトリックにパウロ・ディバラの3アシストと見どころの尽きない一戦だったが、思わぬ形で主役の一人に躍り出た選手がいる。エマヌエレ・ルッリ。19歳、ローマの下部組織が生んだ右サイドバックだ。
生まれたのは、奇しくもローマがスパレッティ体制でインテルからスーペルコッパ・イタリアーナを奪った2日前だった。19年の時を経て、その赤ん坊が満員のオリンピコでローマの一員として躍動した格好になる。
プロフィール
- 氏名:エマヌエレ・ルッリ(Emanuele Lulli)
- 生年月日:2007年8月17日(19歳)
- 出身:パレストリーナ(ラツィオ州)
- ポジション:右サイドバック/右ウイングバック
- 所属:ASローマ
これまでの歩み
ルッリはローマから車で約1時間の街パレストリーナで育ち、地元クラブでボールを蹴り始めた。ローマの育成拠点として知られるトール・トレ・テステで5年間を過ごしたのち、2021年、14歳でASローマの下部組織に加わった。
以降は着実に階段を上る。2023年にU16、2024年にU17でそれぞれスクデットを獲得し、2025/26シーズンのプリマヴェーラでは28試合に出場して2ゴール8アシストを記録した。2025年10月にはイタリアU19代表としてスコットランド戦にも出場し、代表レベルの経験も積み始めている。敬虔なキリスト教徒でもあり、インスタグラムの自己紹介欄には「JESUS IS THE KING」と刻む。
大抜擢の理由
開幕戦での抜擢は、一つの要因ではなく複数の事情が重なって訪れた機会だった。
本職の右サイドには今夏加入したアルゼンチン代表DFナウエル・モリーナと、デヴィン・レンシュが控えていた。だがモリーナはコンディション不良、レンシュは筋肉系のトラブルで、いずれも開幕に間に合わなかった。
もっとも、ガスペリーニはそれ以前からルッリを注視していた。試合前の会見では「ルッリは元気だ。まだ若いが、チームの一員としてやっていける」と言及。プレシーズンキャンプに帯同させ、ボルシア・ドルトムント戦で先発起用し、カーディフ・シティ戦ではディバラのゴールを演出するクロスを供給して、指揮官の信頼を勝ち取った。
実はこの夏、アレッサンドロ・ネスタが率いるセリエBアヴェッリーノへのレンタル移籍が合意間近だった。だがルッリの才能に惚れ込んだガスペリーニ自身が「トップチームに残す」と主張し、この話を止めたという。
ベテランも賛辞
迎えたフィオレンティーナ戦、ルッリは3-4-2-1の右ウイングバックとして先発した。対面のジョアン・マリオを終始封じ込め、60分には自陣右サイドで執念深くボールを刈り取る。そこからディバラへとつなげた一連の崩しは、最後にマレンのハットトリックを完成させる3点目へと結実した。
同じ先発リストには、ポルトから加わったもう一人の2007年生まれ、ロドリゴ・モーラの名前もある。この一戦は、ガスペリーニ体制が進める世代交代を象徴する試合にもなった。
試合後、ブライアン・クリスタンテは『DAZNイタリア』の取材に「素晴らしい試合をした。彼は今シーズン、チームに大きな力を貸してくれるはずだ。常にこんなプレーをしてくれたら完璧だね」と最大級の賛辞を送っている。
プレースタイル
184センチの恵まれた体格とスプリント能力を備え、幼少期の指導者いわく「7歳の頃からすでにサイドを耕していた」というほど、上下動の運動量には定評がある。
もともとは中盤でプレーしていた経歴を持つ。ゲームを組み立てる目や周囲を使う判断力は、単なる走力型のウイングバックとは一線を画す。アタランタ時代にロビン・ゴセンスやハンス・ハテブールを一流のアウトサイドへと育て上げたガスペリーニにとって、ルッリはまさに理想形に近い素材と言えるだろう。
ローマの下部組織からは、現在カリアリで先発の座を勝ち取り、得点も挙げているアレッサンドロ・ロマーノのような同世代もすでにトップレベルで結果を出している。ルッリの飛躍も、その延長線上にある出来事として語られている。
ローマの希望に
ルッリの少年時代、パレストリーナの地元クラブはちょっとした話題のチームだった。若き才能が集い、地元の大会では敵なし。ラツィオの同年代チームに6-1、ローマの同年代チームに4-0で勝利するなど地域の強豪を次々になぎ倒し、「イ・ダンナーティ(呪われし者たち=ヤバいヤツら)」という呼び名までついた。
ルッリはローマデビューの翌日、自身のインスタグラムに「言葉が見つからない。ずっとこの夢を追いかけてきて、多くの犠牲の末に昨夜それが叶った。でもこれは始まりに過ぎない」と綴った。
モリーナとレンシュが戦列に復帰すれば、序列は再び入れ替わる可能性が高い。それでも、UEFAチャンピオンズリーグを含む過密日程を控えるローマにとって、下部組織が生んだこの19歳は、控えという以上の意味を持つ存在になりつつあると言えるだろう。
主な出典
- 『Fischio Finale』
- 『La Gazzetta dello Sport』
- 『VoceGialloRossa』
- 『Il Tempo』
- 『DAZN Italia』

