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カリアリとインテルの「蜜月」――2つのクラブの絆が呼び込んだ悲願のスクデット

「父はリーヴァのユヴェントス行きを望まなかった」

サッカー日本代表DFの菅原由勢が、買い取りオプション付きレンタルでカリアリへ加入した。クラブ106年の歴史で初めての日本人選手になるという。この機会に日本でも注目が集まるカリアリだが、実はセリエA屈指の名門インテルとの間には、深いつながりがある。クラブ史上唯一のスクデット(1969/70シーズン)を呼び込んだのも、インテルとの間で交わされたある移籍劇がきっかけだった。

静かな支配者、モラッティ家

モラッティ家とサルデーニャの縁は、1962年にアンジェロ・モラッティが石油精製会社サラスを設立したことに始まる(サッロクの製油所は1966年操業開始)。そして1967年、サラスは化学会社SIRとともに、カリアリ・カルチョの株式の過半数を取得したと伝えられている。表の会長職には翌1968年、地元の有力者エフィシオ・コリアスが就いた。アンジェロは所有者・資金提供者としてクラブを陰で支える立場だったとされる。

奇しくも、コリアスが会長に就いたのと同じ1968年、アンジェロはインテル会長の座を退いている。以後、モラッティ家がインテルの経営に戻るのは、1995年にマッシモが会長に就任するまで27年待つことになる。しかしその「不在」の間も、一族の”インテリスタ”としての情熱は、遠く離れたカリアリの地で形を変えて発揮され続けていた。

リーヴァ移籍を巡る“裏イタリアダービー”

マッシモ・モラッティは、9月3日付『イル・マッティーノ』のインタビューで、こんな逸話を明かしている。

「父はユヴェントスがジジ・リーヴァを獲得することを望んでいなかった。彼らは実質的に獲得を完了させかけていた。そこで、サルデーニャに強い思い入れを持っていた我々は、わずか数日のうちに水面下でクラブを買い取った。それで、リーヴァがユヴェントスへ行くことはなくなった」

ユヴェントスによるリーヴァ獲得が現実味を帯びたその瞬間、モラッティ家が動いた——というのがマッシモの語る顛末だ。この「数日での買収」こそ、前段で触れた1967年の株式取得を指していると見られる。

このエピソードは、今回初めて明かされたものではない。2022年の『コッリエレ・デッラ・セーラ』のインタビューでマッシモ・モラッティは当時を振り返り、「(移籍濃厚となった翌日、)カリアリの経営陣は、アニェッリにもう取引はできない、クラブには新しいオーナーがいるからだと伝えた。むこうは、それが誰なのかすら聞かなかったようだ。そのとき、彼らはもうそれが誰なのかすぐにピンときていたのだ」と述べている。

1969年7月、セリエAを揺るがした大型トレード

それから2年後の1969年7月、カリアリとインテルは、セリエAを揺るがす歴史的なトレードを成立させた。

インテルの下部組織出身で、カリアリで才能を開花させていたFWロベルト・ボニンセーニャがインテルへ復帰。その”見返り”として、インテルからはウイングのアンジェロ・ドメンギーニ、FWのセルジオ・ゴーリ、そしてチェーザレ・ポーリの3人がカリアリへ移った。

新戦力がもたらしたもの

3人はいずれもカリアリの新戦力として、それぞれ異なる形でチームに貢献した。

右ウイングのドメンギーニは圧倒的なダイナミズムをチームにもたらし、リーヴァの得点力を最大限に引き出す最高のアシスト役となった。ゴーリはボニンセーニャに代わる新たな前線のパートナーとして、機動力あふれるプレーでリーヴァと抜群のコンビネーションを築いた。ポーリは守備陣から中盤まで幅広くカバーできるユーティリティ・プレーヤーとして、チームの堅守を支えた。

一方、インテルに復帰したボニンセーニャは、その後同クラブの主力ストライカーとして、のちにレジェンド級の活躍を見せることになる。

悲願のスクデット、そして「南」の誇り

リーヴァを残し、インテルから新戦力を迎えたカリアリは1969/70シーズン、破竹の快進撃を見せる。指揮官マンリオ・スコピーニョのもと首位を守り続け、1970年4月12日、バーリ戦の勝利で2試合を残してクラブ史上初、そして今も唯一のスクデットを手にした。

伝説的な記者ジャンニ・ブレラはこの優勝を「カリアリのスクデットは、サルデーニャが真の意味でイタリアに迎え入れられた瞬間だった」と評したと伝えられている。北イタリアの強豪がタイトルを分け合ってきたセリエAにおいて、南部のクラブとして史上初の頂点だった。

あのとき、アンジェロ・モラッティがユヴェントスへの対抗心を燃やしていなければ、カリアリの歴史にスクデットはなかったかもしれない。リーヴァの背番号11が、カリアリの永久欠番になることもなかったのかもしれない——。

半世紀以上を経たいま、菅原由勢というもうひとりの「新戦力」を迎えたカリアリ。その加入がどんな縁を生むかはまだ分からないが、このクラブとビッグクラブとの間には、こうした特別な歴史が刻まれている。

●菅原由勢が加入。カリアリってどんなクラブ? 赤と青、地中海の島の物語(2026/9/1[Note])

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