ルツェルン、クラブ・ブルッヘと歩んだステップを、数字と現地の評判から追う
インテルは6月5日、クラブ・ブルッヘとの契約に盛り込んでいた買い戻し条項(2300万ユーロ)を発動し、アレクサンダル・スタンコビッチを再獲得した。
ジュゼッペ・マロッタ会長は今年2月の時点で「彼は名門の血を引く家系の出身で、クラブの息子であり、非常に優れたパフォーマンスを見せている。我々が買い戻し条項を盛り込んだのには理由がある」と語っており、かなり前から買い戻しに動いていたことが分かる。
実際にベルギーで何が起きていたのか、数字と現地の評判から追っていき、2026/27シーズンのインテルで有用なのかを考察する。
プロフィール
氏名:アレクサンダル・スタンコビッチ(Aleksandar Stanković)
生年月日:2005年8月3日(20歳)
国籍:セルビア
ポジション:守備的MF、インサイドハーフ、センターバック
経歴:インテル下部組織→FCルツェルン(2024/25・レンタル)→ クラブ・ブルッヘ(2025/26・完全移籍)→ インテル(2026-)
成長の3ステップ――下部組織→ルツェルン→クラブ・ブルッヘ
デヤン・スタンコビッチを父に持つアレクサンダル・スタンコビッチは、サッカー一家で育ち、インテルの下部組織に入団した。プリマヴェーラでは通算58試合12ゴール6アシストを記録し、2023/24シーズン単体でも26試合7ゴール3アシスト、セルビアU19代表のキャプテンも務めた。
若手時代からその才能は高く評価されていたが、トップチームでは出番が見込めず、2024年夏にスイスのFCルツェルンにレンタルした。
ルツェルンで過ごした2024/25シーズンは、リーグ戦38試合で3ゴール2アシストを記録。マリオ・フリック監督の下で不動のレギュラーに定着し、プロ1年目で手応えをつかんだ。
2025年夏にクラブ・ブルッヘに加入すると、リーグ戦39試合出場で6ゴール2アシスト、公式戦全体では55試合9ゴール5アシストを記録し、ジュピラー・プロ・リーグの最優秀若手選手賞にも輝いた。
ベルギーで攻撃が進化
アレクサンダル・スタンコビッチは、ベルギーで過ごした1年間でどう成長したのか。数字を並べるとこの1年の変化がはっきり見える。

『SofaScore』のデータによると、パス成功率は76%から85%に上昇し、特に敵陣でのパス成功率は62%から82%へと20ポイント近く伸びた。
一方でロングパスやクロスの本数は減少しており、リスクの高い長い配球を抑え、ショートからミドルパスを軸にした確実なビルドアップへと移行したことがうかがえる。味方の決定機を演出するビッグチャンス創造数も、2回から6回へと増加した。
この変化は、ルツェルン時代に守備的MFとしてのタスクを主に担っていたのに対し、クラブ・ブルッヘではより高い位置での攻撃的アクションに関与していたことを示している。
事実、攻撃面においてはペナルティエリア内でのシュート数が15本から39本へと急増し、エリア内でのゴール数も1得点から4得点へと伸びた。リーグ戦のゴール数自体も3得点から6得点へと倍増している。
守備面では、タックルやインターセプトの絶対数こそ微減したものの、デュエル勝率(地上50%から52%、空中51%から57%)は向上。ファイナルサードでのボール奪取数は1試合平均0.1回から0.5回へと5倍に跳ね上がった。
プレーエリアが前方にシフトしたことで、守備アクション自体の回数は減ったが、質の高い迎撃やハイプレスに重心を移したスタイルの変化が数字に表れている。
具体的な試合でもこの進化は証明されている。今年1月末に行われたオリンピック・マルセイユ戦では、1ゴール2アシストを記録してマン・オブ・ザ・マッチに選出。攻撃的な局面におけるクオリティの向上を強く印象づけた。
インテルの事情と役割考察
インテルは公式に、ブルッヘでの1年を「公式戦55試合に出場し、9ゴール5アシストを記録した、もう一つの見事なシーズン」と位置づけ、この数字そのものを買い戻しの理由として挙げている。市場では4000万ユーロ規模での売却も視野に入っていたといわれているが、クリスティアン・キヴ監督がチームに残す方針だとも伝えられている。
プリマヴェーラ時代からの盟友であるフランチェスコ・ピオ・エスポジトとの関係性も興味深い。インテルは公式サイト上で「彼はピオ・エスポジトとも強い絆を築き、忘れがたい瞬間を共にしてきた」と紹介している。下部組織出身の才能が他クラブで経験を積んで復帰するというモデルは、すでに一定の成功を収めているピオ・エスポジトの歩みとも重なる。
戦術面を見据えると、キヴ監督が採用する3-5-2のシステムにおいて、スタンコビッチはアンカー(レジスタ)としてもインサイドハーフとしても起用される可能性が考えられる。
『DAZNイタリア』は、スタンコビッチのポジション的な柔軟性に言及し、攻守両面での貢献が期待できると指摘している。実際、ユース時代はハカン・チャルハノールのようなゲームメイク能力を備えた守備的MF、あるいは展開力に優れたセンターバックという大枠のイメージだった。
しかし、ベルギーでの1年間を経て、ニコロ・バレッラやダヴィデ・フラッテージのようにピッチを縦横無尽に駆けるボックス・トゥ・ボックスとしてのダイナミズムが向上したと読み取れる。完全な互換とまではいかなくとも、双方の役割をハイレベルにこなすポテンシャルを秘めている。
懸念されるのは出場機会だ。近年のクリスティアン・アスラニのように、プレー時間が限定された結果として成長が停滞し、最終的にクラブを離れるというシナリオも否定はできない。
それでも、現在のインテル中盤の状況を見ればチャンスはある。フラッテージは今夏の移籍市場での放出が濃厚とされており、ヘンリク・ムヒタリャンも1年後の現役引退が予想されている。これから新戦力がやって来る可能性も大いにあるが、少なくとも現時点でインサイドハーフの層に不安があるのは確かだ。
ベルギーで見せた急激な成長曲線を、インテルのピッチでも同様に描くことができるか。その適応力次第で、中盤の主軸へと一気に登り詰める可能性もある。
守備の安定感を土台に、着実に前への推進力を増してきた20歳が、父親も愛した名門の中盤でどのような大輪の花を咲かせるのか。多くのインテリスタたちが、その挑戦を期待に胸を膨らませて見守っている。
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