新布陣3-4-2-1採用の裏側、フロント改革と補強・放出の現在地
5月25日、ACミランはマッシミリアーノ・アッレグリ監督およびフロント幹部の解任を発表した。約3週間後にルベン・アモリムを新監督に迎え、7月13日にはミラネッロでプレシーズンが始動している。ジェリー・カルディナーレが主導するようになってミランはどう変わったのか。フロントの動き、アモリムの初練習、補強・放出の展望を追い、識者たちのファーストインプレッションをチェックする。
フロント大改革――カルディナーレの直接関与
2026/27シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を最終節のカリアリ戦で敗れたことで逃したミランは、5月25日にアッレグリ監督、ジョルジョ・フルラーニCEO、イグリ・ターレSD、ジェフリー・モンカダTDの解任を一斉に発表した。
この粛清以降、新体制の構築には様々な噂が出たものの、最終的にはカルディナーレが自ら陣頭指揮をとる形で再始動することが決まった。オーナーの監督下でスタッフ全体が動くクラブへと戻りつつあると報じられている。
アモリム体制の練習に見る3-4-2-1とハイプレスへの転換
6月中旬、ミランはルベン・アモリムの監督就任を発表した。契約期間は2年(延長オプションあり)で、セリエA未経験の指揮官がスポルティングCP、マンチェスター・ユナイテッドで貫いてきた3-4-2-1/3-4-3が新たな基盤となる。
7月13日、ミラネッロでプレシーズンのトレーニングが始動した。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』はプレシーズンに向けて“戦術的な完全なオーバーホール”になると評した。
同紙によれば、ミランは低いブロックで構える守備から、ボールを失った直後に高い位置で奪い返す守備への転換を進めているという。相手のバックパスやファーストタッチのミス、サイドへの緩いパスを”トリガー”として守備ラインを一斉に押し上げ、タッチライン側へ誘導しながら内側のパスコースを封鎖し、ロングボールを強制する狙いがあるとされる。
目標は「ボールロストから5〜8秒以内の奪回」で、選手間の距離を詰めた状態での高強度のスプリントを反復するメニューが組まれている。ビルドアップでは3人のCBがクリーンにボールを扱い、保持を目的化せず2タッチ以内に前進させることが強く求められた。
カルロ・ペレガッティ記者も、練習が終始ボールを使った高強度のメニューで構成され、
走るだけのトレーニングはほとんどないと証言。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のルカ・ビアンキン記者は、後ろからの組み立てをやり直させる徹底ぶりと、2チームを入れ替えながらテンポを落とさない練習内容を紹介した上で、「この新しいやり方がミランを勝利に導くかはこれからの結果次第だが、前体制とは明らかに違うミランが作られつつあるのは間違いない」と評した。
戦術転換のカギを握るとみられているのが、クリストファー・エンクンクとクリスチャン・プリシッチだ。
『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、2人がゴンサロ・ラモスを支える2列目として起用され、そのテクニックとスピードがアモリムの求める”ライン間の創造的プレーメイカー”像に合致すると分析している。
アモリム自身も就任会見でプリシッチについて「例外的なタレント。セリエAの守備的な環境の中で、違いを生み出す可能性がある。彼をどこで使うか、私には非常に明確なアイデアがある」と語った。
移籍市場の動き
すでに大物2人獲得、若手にもフォーカス
補強面では、すでにゴンサロ・ラモスとマリオ・ヒラの獲得を終えている。
次の焦点はサイドの多機能プレーヤーで、マンチェスター・ユナイテッド時代の教え子であるヌサイル・マズラウィにアモリムが高い関心を寄せているとされるが、クラブ間の交渉は難航が予想される。
そのほかでは、2列目に若手の有望株を連れていきたい構えとされる。ヘンクのコンスタンティノス・カレツァス、レヴァークーゼンのケリム・アライベゴヴィッチらが候補として挙がっている。
カレツァスについてカルディナーレは「今取らなければ二度と手に入らない投資」と見ているとも伝えられている。
カルディナーレは、若き才能の流出に細心の注意を払っていることも注目ポイントで、フランチェスコ・カマルダとクリスティアン・コモットの契約延長交渉が進行中で、2031年までの長期契約が交わされる見通しだ。
これは、マッティア・リベラーリの再獲得に失敗し、コモに奪われる格好になったことが影響し、同じ轍を踏まないための布石と見られている。
ビッグネーム放出も
ゴンサロ・ラモスとマリオ・ヒラの獲得ですでに1億ユーロ以上を投じたミランは、選手の売却にも動いているはずだ。
ラファエル・レオンはアモリム体制のプロジェクト外と判断されていると模様で、クラブは売却から最低6000万〜7000万ユーロを得たい意向とされる。
サンティアゴ・ヒメネスは放出リストにいたもののFIFAワールドカップ2026で追った足首のケガが原因で、移籍交渉の難航が予想される。
そのほかでは、フィカヨ・トモリやルベン・ロフタス=チーク、ユスフ・フォファナらが放出候補だ。
一方で、アモリム監督はレンタルから戻ってきた選手たちの多くをプレシーズンのトレーニングに呼んでおり、現有戦力をじっくり見極めた上で、どのポジションを強化すべきかを選定する見込みだ。
カルディナーレ体制になったことでの大きな変化としては、イタリアお馴染みの“駆け込み移籍”の激減が予想されている点だ。市場閉鎖間際の値引きや、それに伴う玉突き移籍が多く発生するのがカルチョメルカートだが、カルディナーレは適正価格であれば、そのタイミングを逃さずに即決するタイプだとされる。これは、最終的な決定権を持つからこそ可能なことであり、スピード感のある動きが期待できる。
識者の見解――期待と懐疑が交錯
ペレガッティ記者は、新体制にかなりの期待を寄せている。
7月13日、カルディナーレがヘリコプターでミラネッロに到着した様子にシルヴィオ・ベルルスコーニ時代を重ねつつ、ピッチ中央に立ち選手に指示を出すアモリムの姿を見て「合流の日はいつも、希望と幻想に満ちているから美しい」と綴った。
7日には「ミランはすでに1億ユーロを投じたが、さらに1億ユーロを市場に投じられるという声もある。カルディナーレはこれらの資金を持っており、投資の意味を理解したようだ」と述べ、アモリムの実績が未知数な点についても「デ・ゼルビやファリオーリ、キヴのように、新監督は誰もが”未知数”だ。しかし、そのポテンシャルは評価されている」と前向きに位置づけた。
一方で懐疑論もある。実際、クルヴァ・スッドは13日の初練習時にミラネッロに姿を見せず、現体制に抗議をした。クルヴァ・スッドはアモリム監督自身には好感触を持っているとされるが、前述のカルディナーレのヘリコプターでの到着も、見る人によっては「ショー」という印象を与えており、クラブへの不信感は拭えていない。
両者の間に位置する見方もある。『MilanReports』の分析は、ミランがハイプレスとポゼッション支配を実現する技術的な土台を備え、ラモス獲得などクラブもアモリムのビジョンを後押ししていると評価する一方、「アモリムが3バックの青写真を”絶対”として扱い柔軟性を欠けば、セリエAの戦術的な要求が移行期を窒息させかねない。真価は彼がどれだけ妥協できるかにかかっている」と釘を刺す。
『スポルトメディアセット』のクラウディオ・ライモンディ記者も、カルディナーレがクラブをますます自らの手元に引き寄せている姿勢について「オーナーが現場に近づいていることはポジティブだが、その介入の仕方には議論もある」と両方の視点からみている。
プレシーズンの先に
新体制の真価が問われるのは、開幕後の結果が出始めてからになる。アモリムは就任会見の席で、「すぐに華々しい結果は約束できないが、クラブのために常にベストを尽くすことだけは約束できる」と宣言したが、すぐにでも結果を出さなければ批判にさらされ、軌道に乗るのが難しくなるのが自然な流れだ。
プレシーズンで示された”完全なオーバーホール”がピッチ上でどう機能するか、そして大型の放出・補強がどこまで計画通りに進むか。
カルディナーレとアモリムのミランがどちらの評価に近づいていくのか、開幕までの数週間でさらに輪郭がはっきりしてくるはずだ。
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