王者インテルのメルカートは?
インテルは2025/26シーズンのセリエAでスクデットを獲得し、イタリア国内では圧倒的な強さを示した。一方、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、ノックアウトフェーズプレーオフでボデ/グリムトに敗れ、早期敗退に終わった。クリスティアン・キヴ体制2年目となる2026/27シーズンは、国内での連覇に加えて、ヨーロッパの舞台での結果が問われるシーズンになる。
王者の座を守りながら、欧州でどこまで戦えるチームへと進化させられたか。今夏のここまでの補強を振り返る。(8月17日時点)
退団・放出したメンバー
インテルは、フランチェスコ・アチェルビ、マッテオ・ダルミアン、ステファン・デ・フライ、ヤン・ゾマーの4人が契約満了でクラブを去った。加えて、デンゼル・ドゥンフリースが契約解除条項を行使してレアル・マドリーへ移籍している。長年チームを支えたベテラン層が、比較的早い段階で相次いで去就を固めた形だ。
補強ポイント
退団者の顔ぶれを踏まえると、補強が必要なポジションは多岐にわたっていた。
オーナーであるオークツリーからの基礎予算5000万ユーロに主力売却で得た収入を積み増す形で、センターバック2名・右ウイングバック・中盤、GKの計5ポジションを補強する計画だったという。
中盤は、ヘンリク・ムヒタリャンとハカン・チャルハノールの1年後の退団が濃厚視されている。加えてダヴィデ・フラッテージも放出されており、世代交代を見据えた補強が求められる状況だ。
右サイドは、ドゥンフリースの放出に加え、ルイス・エンヒキの去就次第ではもう1枚が必要になる。
もう一つ、昨シーズンから続くテーマとして、ニコ・パスのような「違いを生み出せる」タイプの補強が挙げられる。このタイプの選手が加わればシステムの変更も視野に入るが、適任者が見つからず後回しにされてきた経緯がある。その状態のまま1年間を優勝で終えている実績があることも、優先度を下げやすい事情だったと言えるだろう。
こうした編成方針について、キヴ監督自身は7月16日の会見で「我々は競争力のあるスカッドを持っている。市場でのすべての動きはチームのアイデアとクラブの野心に合致している」と語り、場当たり的な補強ではないことを強調していた。

獲得した選手と獲得を狙った選手たち
インテルは早い段階からニコ・パスの獲得に動いていたが、レアル・マドリーからコモへ再度移籍する形となり、この可能性は消えた。昨シーズンから続くアデモラ・ルックマンのような、個人技で違いを生み出せるタイプの補強も模索を続けているが、しばらく「夢」のような個人の獲得話は出ていない。
一方で、現実的な補強は動いてきた。
GKは、元々インテルに所属していたジョゼップ・マルティネスが、ゾマーの後釜として正GKに昇格する形となった。これにより空いた控えGKの枠には、ラツィオからイヴァン・プロヴェデルを300万ユーロで獲得している。
センターバックは、ジョン・ストーンズをフリーで獲得した。技術面での評価は高い一方、故障歴を不安視する声も目立つ。ファブリツィオ・ロマーノは7月7日、「ユヴェントス、インテル、ミランにオファーされたが、いずれも給与と負傷記録を懸念している」と伝えており、『ガーディアン』も7月27日付で、ワールドカップでの活躍が懸念を一部払拭したとしつつ「過去2シーズンで負傷によりほとんど出場できていない」と報じている。
クリスティアン・ロメロの獲得も狙ったが、こちらは実らなかった。センターバックの人数不足を踏まえると、レンタルから復帰したバンジャマン・パヴァールの存在は大きく、当面の穴埋め役になりそうだが、この先の市場の動き次第という側面もある。
中盤では、アレクサンダル・スタンコビッチの復帰がポイントとなりそうだ。夏の間は放出の噂も出ていたが、本人は育ったクラブでのプレーに意欲的で、プレシーズンでも高い評価を得ている。8月5日には、ブレントフォードから届いた4000万ユーロのオファーをインテルが拒否したという報道もあったが残留へ向かっている様子。ハカン・チャルハノールの後継者としての期待がかかる。
右ウイングバックは、まずマルコ・パレストラの獲得が失敗に終わった。続いて交渉が進んでいたアナン・ハライリも、メディカルチェックをパスできなかった。最終的にジェド・スペンスの加入で決着している。
この経緯について『TMW』は「スペンスは身体性と強度を備えるが、パレストラやハライリに惹かれた1対1の質に欠ける」と技術面での評価の違いを指摘していた。
ここで注目したいのが、センターバックとウイングバックの組み合わせだ。昨シーズン終盤は、マヌエル・アカンジを右センターバックから中央へ移し、右にヤン・ビセックを起用する形を取っていた。今シーズンは逆に、アカンジが右へ戻り、ストーンズが中央に入るという見方が強い。
今夏、インテルが右ウイングバックの補強候補として名前が挙がった選手が軒並み攻撃的なタイプだったのは、偶然ではないだろう。
クリスティアン・キヴ監督としては、右センターバックでバランスを取りつつ、ウイングバックにはある程度攻撃的なタレントを置きたい意向があると読める。アンディ・ディウフのコンバート起用も、その方向性の表れと見ることができる。そうなると、アグレッシブに攻め上がるタイプのセンターバックであるビセックはやや使いにくくなるかもしれない。バランス型のルイス・エンヒキとは相性が良かった組み合わせだが、そのルイス・エンヒキはローマ移籍の話が進行中だ。
インテル2026/27予想フォーメーション

まだ物足りない?
総じて見れば、今夏の補強は路線変更というより、退団したベテラン層の穴を埋める作業に近い。
守備面でのプラス材料はストーンズだ。ビルドアップ局面での貢献が期待できる一方、稼働率には不安が残る。過密日程の中でいかに負荷を管理するかは、スタッフ陣の手腕が問われる部分になりそうだ。
右ウイングバックの攻撃特化路線は、当初の交渉がうまくいかなかった結果として浮かび上がった側面もあるが、CLを勝ち抜く上での一つのアイディアとは言える。
もっとも、ディウフのコンバートだけでは物足りず、加入したスペンスがどこまでプラスに働くかが焦点になる。スペンス自身はトッテナム時代、右よりも左サイドでのプレーの方が高い評価を受けていた印象もあり、その点は割り切りが必要かもしれない。ただ、左サイドには2025/26シーズンのセリエA最優秀選手賞を受賞したフェデリコ・ディマルコがいるため、やはり右ウイングバックとしてカウントすべきだろう。
マロッタ会長自身、7月13日に「チャンピオンズリーグでもっと良い結果を出す必要がある」と述べ、欧州での巻き返しへの強い意欲を示していた。
そもそも、インテルは仮に補強をしなくてもセリエA連覇のチャンスが十分にあるほどの戦力がある。それでも、CLで勝ち上がるには、メルカート閉鎖までにもう一段の上積みが必要になりそうだ。

