カルチョの公平性が再び問われる事態に
イタリアサッカー界に再び激震が走った。イタリア審判連盟(AIA)の審判選定責任者であるジャンルカ・ロッキが、スポーツ不正操作への加担の疑いでミラノ検察の捜査を受けたことを受け、即時の職務停止を発表した。
同氏は「CAN(全国審判委員会)が最大限の平穏の中で活動できるように」との理由から自ら身を引く決断を下したが、2025年のセリエAおよびコッパ・イタリアにおける具体的な「判定操作」の疑いが浮上しており、事態は深刻な局面を迎えている。
捜査の焦点:特定クラブへの「便宜」と判定への介入
ミラノ検察のマウリツィオ・アショーネ検事が構成した起訴事実には、具体的な3つの事例が挙げられている。
- 特定審判の割り当て疑惑: 2025年4月20日のセリエA第33節、ボローニャ対インテルにおいて、当時スクデット争いの渦中にあったインテルに対し、同クラブにとって「好ましい」とされるアンドレア・コロンボ主審を意図的に割り当てたとされている。
- 「好ましくない」審判の排除: コッパ・イタリア準決勝第1戦、インテル対ミランのダービーにおいて、ダニエレ・ドヴェーリ氏を主審に指名。これは、その後の決勝戦やセリエAの重要局面において、インテル側が難色を示す同氏が割り当てられないよう「消費」させるための戦略的な排除であった疑いが持たれている。
- VAR担当者への不当な圧力: 2025年3月1日のウディネーゼ対パルマ戦。ロッキはVARスーパーバイザーという立場を利用し、VAR担当のダニエレ・パテルナに対し、主審へオンフィールドレビュー(OFR)を促すよう圧力をかけた疑いがある。結果として、パテルナの当初の判断に反し、ウディネーゼにPKが与えられるよう誘導したとされる。
ロッキの主張とAIAの対応
ロッキはこれらの容疑を一貫して否認している。『ANSA通信』を通じ、「私は無実であり、以前よりも強くなって戻ってくると確信している。この苦渋の選択は、司法手続きを正しく進め、審判員組織の平穏を守るためのものだ」と声明を発表した。
また、同様に捜査対象となったアンドレア・ジェルヴァゾーニも職務を停止。AIAはこれを受け、今後の体制を協議するために直ちに全国委員会を招集した。
ジャンルカ・ロッキとは何者か
渦中のジャンルカ・ロッキとは、イタリア審判界における最高権威の一人である。
2003/2004シーズンにセリエAデビューを飾り、その後は国際審判員としてFIFAワールドカップやEURO、UEFAチャンピオンズリーグなど数々のビッグマッチで主審を担当した実績を持つ「エリート」であった。
かつて「カルチョーポリ」の捜査線上に名が挙がったこともあったが、最終的には完全に無実が証明され、審判協会から処分を受けることもなかった。2020年に47歳で現場を引退すると、翌2021年7月にセリエA・Bの審判選定責任者に就任。当時のAIA会長アルフレッド・トレンタランジェ氏は「彼こそが新しい世代の象徴である」と、その手腕に大きな期待を寄せていた。
就任後のロッキは、DAZNイタリアの番組『Open VAR』を通じて審判の音声を公開するなど、不透明だった審判界の透明性を高める改革を推進。現場のミスを認めつつも、審判団を疑う声に対しては「ミスは犯すが、不誠実ではない」と強い口調で反論するなど、常に最前線で組織を統率してきた。しかし、今回の疑惑により、その約4年間にわたる改革の道は志半ばで中断を余儀なくされることになった。
混迷を極めるイタリアサッカー界
今回のスキャンダルは、単なる審判員個人の問題に留まらない。イタリアサッカー連盟(FIGC)は6月22日に会長選挙を控えており、さらに次期ワールドカップ出場を逃した後の再建案を模索している最中での出来事だ。
アンドレア・アボディ スポーツ相は、「最も深刻なのは、この告発自体がサッカーシステム内でどのように扱われてきたかという点だ」と述べ、組織の自浄能力に疑問を呈している。
かつて「カルチョーポリ」で信頼を失墜させたイタリアサッカー界。2025年の今、再び審判の公平性を巡る闇が、ピッチ外からカルチョの威信を脅かそうとしている。4月30日に予定されているロッキ氏への尋問が、事件の解明に向けた大きな焦点となるだろう。
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