メルカート終盤に大移動
カリアリは2025/26シーズンのセリエAを14位(11勝10分17敗)で終えた。3シーズン連続の残留は、セリエA定着を目指すここ数シーズンの立ち位置そのままの結果と言える。ファビオ・ピザカーネ監督はプレシーズンの会見でも、「まずセリエA残留」を最優先目標に掲げている。
2026年夏の移籍市場は9月1日に閉幕した。今夏は主力の一人だったセバスティアーノ・エスポジトをめぐる騒動が長引き、クラブの補強計画を揺さぶった。その顛末と、締切直前に加入が決まった日本代表DF菅原由勢の獲得経緯を軸に、今夏の補強の全貌を、現地メディアの評価もあわせて総括する。
今夏の主な獲得・放出リスト
| 区分 | 選手 | pos | 移籍元/移籍先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| IN | ダニエル・マルディーニ | MF | アタランタ | レンタル |
| IN | ヤコポ・ファッツィーニ | MF | フィオレンティーナ | レンタル |
| IN | ジュゼッペ・アウレリオ | DF | スペツィア | 完全移籍 |
| IN | アレッサンドロ・ロマーノ | MF | ローマ | レンタル |
| IN | ロベルト・ガリアルディーニ | MF | ヴェローナ | フリー |
| IN | デミ・アカラキリ | MF | エヴァートン | フリー |
| IN | ムバラ・エンゾラ | FW | フィオレンティーナ | レンタル |
| IN | ハリー・ウィンクス | MF | レスター | |
| IN | 菅原由勢 | DF | サウサンプトン | 買取オプション付きレンタル(550万ユーロ) |
| IN | ラファエル・コフラー | DF | ズュートティロール | レンタル |
| IN | ヤニス・マソラン | MF | インテル | レンタル |
| IN | アリウ・ファデラ | FW | コモ | レンタル |
| IN | ケヴィン・カルロス | FW | ニース | レンタル |
| IN | リッカルド・チエルヴォ | FW | サッスオーロ | レンタル |
| OUT | ジャンルカ・ガエターノ | MF | アタランタ | 完全移籍 |
| OUT | セバスティアーノ・エスポジト | FW | サッスオーロ | レンタル |
| OUT | ニク・プレレツ | FW | オックスフォード | 完全移籍 |
| OUT | マッテオ・プラーティ | MF | ラシン・サンタンデール | レンタル |
| OUT | マテウシュ・ヴィエテスカ | DF | ヴィエチスタ・クラクフ | 完全移籍 |
| OUT | ガブリエレ・ザッパ | DF | ヴェローナ | レンタル |
| OUT | ルカ・マッツィテッリ | MF | コモ | レンタル終了 |
| OUT | マルコ・パレストラ | DF | アタランタ(→チェルシー) | レンタル終了 |
| OUT | イブラヒム・スレマナ | MF | アタランタ(→サッスオーロ) | レンタル終了 |
| OUT | ミカエル・フォロルンショ | MF | ナポリ(→モンツァ) | レンタル終了 |
退団・放出したメンバー
中盤では、ジャンルカ・ガエターノがアタランタへ完全移籍した。移籍金は1200万ユーロにボーナス最大300万ユーロを加えた規模とされている。ルカ・マッツィテッリ、ミカエル・フォロルンショもローン終了に伴い去っており、昨季チームを支えた中盤の骨格が大きく入れ替わることになった。
右サイドでは、レンタルで加入していたマルコ・パレストラがアタランタに復帰。その後、チェルシーへの加入が決まった。さらに、ガブリエレ・ザッパもヴェローナへ移籍した。
そして今夏最大の焦点となったのが、後述するセバスティアーノ・エスポジトの放出だ。
補強ポイント
退団者の顔ぶれを踏まえると、補強が必要なポジションは複数にまたがっていた。
中盤は、マッツィテッリ、フォロルンショ、ガエターノの退団を埋める補強が急務だった。ピザカーネ監督はこの点について、獲得した選手たちに満足していると伝えられている。
パレストラとザッパが抜けた右サイドも、補強が必要なポジションだった。
加えて、プレシーズン中に予期せぬ形でエスポジトと袂を分かつことになったことで、FWの補強も急務となった。
セバスティアーノ・エスポジト騒動——市場を揺らした30日間
昨季のカリアリ残留の立役者の一人だったセバスティアーノ・エスポジトだが、今夏はクラブとの関係が急速にこじれ、放出に至った。
7月下旬、エスポジト側は契約更新にあたり年俸150万ユーロ超の増額を要求したとされ、クラブのピエトロ・アッカルディSDとの交渉は決裂した。
8月1日には、プレシーズン合宿地だったポンテ・ディ・レーニョから無断で離脱し、ドイツ遠征を欠席する事態に発展。クラブは規律処分の検討に入ったことを公式に発表した。
その後、8月中旬にかけては、10日間の診断書が失効した直後にさらに15日間の診断書が追加提出されるという展開が続いた。ピザカーネ監督はこの状況について「グループを守るのが私の義務だ。この件には当惑している」と語ったと伝えられている。
結局、関係の修復には至らず、8月29日にサッスオーロへの移籍が正式発表された。移籍形態は有償レンタル(レンタル料100万ユーロ)で、買取オプションは1100万ユーロ、ボーナスを含めた総額は最大1200万ユーロ規模とされている。この交渉と並行する形で、サッスオーロからはウィンガーのリッカルド・チエルヴォがレンタルでカリアリへ加入した。
昨季のセリエAで7ゴール6アシストと活躍していただけに、カリアリは当初2000万ユーロ程度の売却額を想定していたとされる。しかし、チエルヴォ込みの取引になったことを踏まえると、実質的には値引きに応じざるを得なかったと見ることもできる。エスポジト売却益の40%をインテルに支払う必要もあったため、安値での売却は実質的な利益が減ってしまうことも交渉が難航した事情とされる。
獲得した選手たちと菅原由勢
中盤では、ローマからアレッサンドロ・ロマーノを買い取りオプション付きレンタルで獲得した。開幕節のパルマ戦でいきなり決勝ゴールを記録し、現地でも上々のスタートを切った。
前線にはアタランタからのレンタルでダニエル・マルディーニが加わった。フィオレンティーナからレンタルで加入したヤコポ・ファッツィーニ(23)も元U-21イタリア代表で、伸びしろのある選手だ。移籍市場の終盤にはインテルからヤニス・マソランも加入し、出場機会を求める若手が集まった。
一方で、レスターからハリー・ウィンクスが加入したほか、メルカート終盤にはピザカーネ監督のリクエストに応える形で経験値の高い選手も加わった。フリートランスファーで獲得したロベルト・ガリアルディーニ、フィオレンティーナから加入したムバラ・エンゾラがその代表で、ベテランの補強でチームの安定を図った形だ。
エンゾラ加入決定の少し前に決まったのが、菅原由勢の加入だ。サウサンプトンからの有償レンタルで、買取オプションは550万ユーロと伝えられている。ローマのヴィッラ・スチュアートでメディカルチェックを受けたのち、契約が完了した。
菅原はパレストラとザッパが抜けた右サイドの後任という位置づけだ。開幕から2試合はポルトガル人のゼ・ペドロがこのポジションに入っていたが、本職はセンターバックだ。純粋な右サイドバックである菅原の加入は、チームにとって待望だったと言えるだろう。
クラブは公式に「右サイドバック、右ハーフ、3バックの右まで対応できる汎用性」「スピード」「クロスの精度」を評価するコメントを出している。カリアリにとっては、クラブ106年の歴史で初めての日本人選手となる。
現地メディアの評価
現地メディアの補強総括において、『TMW』の補強採点は「6.5」だった。「エスポジト問題はサルデーニャのクラブの夏を台無しにしかねなかったが、そこから見事に立ち直り、マルディーニらを獲得した。ファッツィーニは大きな可能性を秘めており、セリエBで好調だったマソランも同様。攻撃陣ではケビン・カルロスが”勝つべき賭け”となる」と評した。
ダニエレ・ロンゴ記者は自身のSNSで「6-」とやや厳しめに採点した。「マソランとロマーノは質の高い補強。エスポジトとガエターノの後継者が不在。ファッツィーニとマルディーニは再起をかけた賭けの選手」とコメントしている。
『Panorama』はさらに厳しく「5」の採点だ。「カリアリは市場の最後にエンゾラを確保したが、それはエスポジトの非常に厄介な騒動を処理した後にようやく可能となったものだった。中盤も主力が一斉に去って土台から再構築されている。新加入のロマーノがすでに輝きを放っているのは唯一の救いだが、前線においてはマルディーニが本格的に覚醒し、攻撃陣を牽引してくれることを神に祈るほかない」と記した。
穴は埋まったか
最終的にみると、カリアリは今夏、主力だったエスポジトとの関係悪化という想定外のトラブルでチーム編成を見直す必要に迫られたが、市場終盤にかけて中盤・攻撃陣の補強を一気に積み上げ、締切直前には菅原由勢の獲得という”歴史”も作った。
ただし、ダニエレ・ロンゴ記者が指摘した「エスポジトとガエターノの後継者が不在」という評価は重い。『Goal(イタリア版)』が「昨季の主力3人を欠いたままの船出」だとして5.5という厳しめの採点をつけている点も、軌を一にする。放出した主力の穴を直接埋めるだけの決定打があったとまでは、現地でも評価が割れている。
ベテラン勢が屋台骨となり、ロマーノのような有望株が昨季のパレストラのようなブレイクを果たせば、あっさりと残留を決められる可能性もある。ただし、未知数な部分は多く、補強の真の評価を下すのはもう少し先になってからだろう。
カリアリのフォーメーション


