王者インテルのメルカートは?
インテルは2025/26シーズンのセリエAでスクデットを獲得し、イタリア国内では圧倒的な強さを示した。一方、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、ノックアウトフェーズプレーオフでボデ/グリムトに敗れ、早期敗退に終わった。クリスティアン・キヴ体制2年目となる2026/27シーズンは、国内での連覇に加えて、ヨーロッパの舞台での結果が問われるシーズンになる。
2026年夏の移籍市場は9月1日に閉幕した。王者の座を守りながら、欧州でどこまで戦えるチームへと進化させられたか。今夏の補強の全貌を、現地メディアの評価もあわせて総括する。
今夏の主な獲得・放出リスト
| 区分 | 選手 | pos | 移籍元/移籍先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| IN | イヴァン・プロヴェデル | GK | ラツィオ | 300万ユーロ |
| IN | ジョン・ストーンズ | DF | マン・シティ | フリー |
| IN | バンジャマン・パヴァール | DF | マルセイユ | レンタルから復帰 |
| IN | ジェド・スペンス | DF | トッテナム | 3000万ユーロ+ボーナス |
| IN | アレクサンダル・スタンコビッチ | MF | クラブ・ブルッヘ | 買い戻しオプション行使 |
| IN | カーティス・ジョーンズ | MF | リヴァプール | 3000万ユーロ+ボーナス |
| OUT | ヤン・ゾマー | GK | クラブ・ブルッヘ | 契約満了 |
| OUT | フランチェスコ・アチェルビ | DF | – | 契約満了 |
| OUT | ステファン・デ・フライ | DF | パナシナイコス | 契約満了 |
| OUT | マッテオ・ダルミアン | DF | – | 契約満了 |
| OUT | デンゼル・ドゥンフリース | DF | レアル・マドリー | 2000万ユーロ |
| OUT | ダヴィデ・フラッテージ | MF | ラツィオ | レンタル料500万ユーロ |
| OUT | クリスティアン・アスラニ | MF | アル・ジャジーラ | レンタル料200万ユーロ |
| OUT | ヤニス・マソラン | MF | カリアリ | レンタル |
| OUT | エベネザー・アキンサンミロ | MF | モンツァ | レンタル |
退団・放出したメンバー
インテルは、フランチェスコ・アチェルビ、マッテオ・ダルミアン、ステファン・デ・フライ、ヤン・ゾマーの4人が契約満了でクラブを去った。加えて、デンゼル・ドゥンフリースが契約解除条項を行使してレアル・マドリーへ移籍している。
中盤では、ダヴィデ・フラッテージがラツィオへ移籍し、好スタートを切った。長年チームを支えてきたベテラン層が、比較的早い段階で相次いで去就を固めた形だ。
余剰戦力の放出も無事に終えた。
補強ポイント
退団者の顔ぶれを踏まえると、補強が必要なポジションは多岐にわたっていた。
オーナーであるオークツリーからの基礎予算5000万ユーロに主力売却で得た収入を積み増す形で、センターバック2名・右ウイングバック・中盤・GKの計5ポジションを補強する計画だったという。
中盤は、ヘンリク・ムヒタリャンとハカン・チャルハノールの1年後の退団が濃厚視されている。加えてフラッテージも放出され、世代交代を見据えた補強が求められる状況だった。
右サイドは、ドゥンフリースの放出に加え、ルイス・エンヒキの去就が夏を通じて焦点になっていた(最終的な結末は後述する)。
もう一つ、昨シーズンから続くテーマとして、ニコ・パスのような「違いを生み出せる」タイプの補強が挙げられていた。このタイプの選手が加わればシステムの変更も視野に入るが、適任者が見つからず後回しにされてきた経緯がある。
こうした編成方針について、キヴ監督自身は7月16日の会見で「我々は競争力のあるスカッドを持っている。市場でのすべての動きはチームのアイデアとクラブの野心に合致している」と語り、場当たり的な補強ではないことを強調していた。
獲得した選手と獲得を狙った選手たち
インテルは早い段階からニコ・パスの獲得に動いていたが、レアル・マドリーからコモへ再度移籍する形となり、この可能性は消えた。
一方で、現実的な補強は着実に進んだ。
GKは、元々インテルに所属していたジョゼップ・マルティネスが、ゾマーの後釜として正GKに昇格する形となった。これにより空いた控えGKの枠には、ラツィオからイヴァン・プロヴェデルを300万ユーロで獲得している。
センターバックは、ジョン・ストーンズをフリーで獲得した。技術面での評価は高い一方、故障歴を不安視する声も目立つ。マルセイユからレンタル復帰したバンジャマン・パヴァールの存在も、センターバックの人数不足を踏まえると大きい。
中盤では、アレクサンダル・スタンコビッチの復帰が一つのポイントだ。ブルージュへのレンタル中に設定されていた買い戻しオプションをインテルが行使する形で復帰しており、復帰後はブレントフォードなどから売却の打診があったとされるが、本人が育ったクラブでのプレーを望み、残留が決まった。ハカン・チャルハノールの後継者としての期待がかかる。
そして今夏最大の補強と言えるのが、リヴァプールから獲得したカーティス・ジョーンズだ。契約期間は2031年まで、移籍金は固定分とボーナスを合わせて3500万ユーロ規模とされている。
右ウイングバックは、まずマルコ・パレストラの獲得が失敗に終わった。続いて交渉が進んでいたアナン・ハライリも、メディカルチェックをパスできなかった。最終的にジェド・スペンスの加入で決着している。
この経緯について『TMW』は「スペンスは身体性と強度を備えるが、パレストラやハライリに惹かれた1対1の質に欠ける」と技術面での評価の違いを指摘していた。
ここで注目したいのが、センターバックとウイングバックの組み合わせだ。昨シーズン終盤は、マヌエル・アカンジを右センターバックから中央へ移し、右にヤン・ビセックを起用する形を取っていた。今シーズンは逆に、アカンジが右へ戻り、ストーンズが中央に入るという見方が強い。
今夏、インテルが右ウイングバックの補強候補として名前が挙がった選手が軒並み攻撃的なタイプだったのは、偶然ではないだろう。クリスティアン・キヴ監督としては、右センターバックでバランスを取りつつ、ウイングバックにはある程度攻撃的なタレントを置きたい意向があると読める。アンディ・ディウフのコンバート起用も、その方向性の表れと見ることができる。
なお、ルイス・エンヒキについてはローマ移籍の噂が夏の終盤まで報じられていたが、最終的には交渉がまとまらず、インテル残留となった。
移籍市場最終日の話題がほとんどなかったインテルだが、9月1日にはフランチェスコ・ピオ・エスポジトが2032年までの契約延長に署名するためにクラブオフィスを訪れた。移籍市場の動きではないものの、今夏のインテルにとって明るいニュースの一つだ。本人は「とてもうれしく、誇りに思う。ただこれで満足せず、これまで通り働き続けるだけだ」とコメントし。
現地メディアの評価
移籍市場が閉幕し、現地メディアも今夏の総括に入っている。『TMW』の補強採点は「7」。「3人の新戦力はいずれもプレミアリーグ出身。ドゥンフリースの穴を埋めるのは容易ではなかったが、スペンスは良い補強だ。ストーンズとレンタルから復帰したパヴァールがアチェルビ、デ・フライの穴を埋め、より機能的になる可能性がある。カーティス・ジョーンズは中盤に多くをもたらすはずで、インテルは依然として『倒すべきチーム』であり続ける」と評した。
優勝候補筆頭だが…
最終的にみると、インテルはベテランが抜けた穴をイングランドからきた3人で埋めた構図で、スケールアップを評価する意見が多い。メルカート最終盤の「機会」に頼らず、早めにチーム編成を固めたのも高評価だ。
ただ、イタリア屈指の戦力を有するインテルにとって、スクデットは最低限の目標であり、常に優勝争いにいなければ、周囲から厳しい意見が飛んでくることは避けられない。
その上でインテルはCLでも勝ち進むという目標があり、そこに届くかどうかは、シーズンを戦ってみなければ分からないところだろう。
2026/27インテルのフォーメーション


