ラモス、ヒラに続く1億5000万ユーロ補強の最終ピース。その経歴と、専門家たちの間で割れる値付けを追う
ミランが、ストラスブールのディエゴ・モレイラの獲得を電撃的にまとめた。ジェリー・カルディナーレ会長がルベン・アモリム監督に贈る補強としては、ゴンサロ・ラモス、マリオ・ヒラに続く3人目。フランスでは「新マルセロ」、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』には「レオン2.0」と呼ばれるこの22歳だが、移籍金をめぐっては識者の間で評価が真っ二つに割れている。
ディエゴ・モレイラとは何者なのか。そしてこの投資は妥当なのか。イタリアメディアの報道をもとに整理する。
プロフィール
- フルネーム:ディエゴ・モレイラ(Diego Moreira)
- 生年月日:2004年8月6日(22歳)
- 出身地:ベルギー・リエージュ
- 国籍:ベルギー(ポルトガルとも深い縁を持つ)
- 身長:179cm
- 利き足:左
- ポジション:サイドハーフ、ウイング、ウイングバック、トレクァルティスタ
- 代表:ベルギー代表
- 移籍元:ストラスブール(フランス)
ベンフィカからストラスブールに至るまでの道のり
モレイラはベルギー・リエージュの生まれだが、キャリアの土台はポルトガルで築かれた。地元スタンダール・リエージュの下部組織を経て、2020年にベンフィカの下部組織へ加入。2022年にはベンフィカでUEFAユースリーグを制し(決勝でザルツブルクを6-0で下す)、10試合で4得点5アシストを記録する活躍を見せた。同年5月13日、パソス・デ・フェレイラ戦でトップチームデビュー。この時期には、のちにミランで再会することになるゴンサロ・ラモスもベンフィカに在籍していた(ただし出場はなく、2人が実際にピッチに立ったことは一度もない)。
2023年7月、モレイラは完全移籍でチェルシーへ加入したが、2カ月後にはリヨンへレンタル移籍。フランスでは出番はほとんどなく、公式戦9試合(381分)の出場にとどまり、2024年1月にレンタル中断でチェルシーへ呼び戻された。
転機は2024年8月16日、ストラスブールへの完全移籍(移籍金は約850万ユーロ)だった。
リアム・ロシニアー監督の下で、フランス語で「ピストン・ゴーシュ(左サイドのピストン)」と呼ばれる左のウイングバックにコンバートされると、優れたスタミナと加速力、クロスの精度を生かして持ち味を発揮。2024/25シーズンは32試合に出場し2得点7アシストを記録し、有望株からプロとして通用する選手へと成長した。
2026年1月、指揮官がガリー・オニールに交代すると、モレイラは再び右ウイングへポジションを移す。ここでも結果を残し、2025/26シーズンはリーグ・アン27試合、全大会通算40試合で4得点7アシストを記録した。
代表歴も一筋縄ではいかない。ベルギーU15からスタートしながらポルトガルU21で7試合を経験し、その後ベルギーU21に復帰(2試合1得点1アシスト)。2025年9月4日にベルギー代表デビューを果たし、この夏のFIFAワールドカップ2026にも出場した。
数字が語る「攻守両面のハイパフォーマー」
『FotMob』のデータ(2025/26シーズンのリーグ・アン)によれば、期待値ゴール(xG)2.02に対し実際のゴールは4、期待アシスト(xA)3.92に対しアシストは6と、いずれも数字を上回る決定力を発揮した。シュート29本のうち11本が枠内、ビッグチャンス創出は全36回中11回。パス成功率81.3%、ロングボール成功率53.2%という技術面に加え、守備アクション96回、タックル成功44回、ボール奪取96回(うち敵陣での奪取13回)という数字は、攻撃だけの選手ではないことを裏付けている。
多用途性も際立つ。ストラスブールでの76試合の内訳は、左サイドハーフ27試合、右ウイング19試合、左サイドバック13試合、左ウイング7試合、右サイドハーフ6試合、トップ下4試合。左右どちらのサイドも、守備的な役割も攻撃的な役割もこなしてきた「ジョーカー」的な選手だと言える。
カルディナーレが動いた理由
今回の交渉は、カルディナーレ会長自身がジョルジュ・メンデス氏と直接まとめたと報じられている。ゴンサロ・ラモス(約7400万ユーロ)、マリオ・ヒラ(約2750万ユーロ)に続く3人目の大型補強で、3選手への投資総額は1億5000万ユーロを超える計算だ。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のルカ・ビアンキン記者は、この補強を「新体制の象徴」と位置づけている。同記者によれば、モレイラはアモリム監督の技術的な好みに合致するだけでなく、ミランのデータアナリスト陣やスポーティングディレクター陣からも支持を得た補強だとされ、クラブ内部では「2〜3〜5年後には4500万ユーロよりずっと高い価値になる」との見立てがあるという。
移籍市場に詳しいファブリツィオ・ロマーノ記者は「モレイラはフォルティッシモ(非常に強い)。ミランは大きなポテンシャルを持つ選手を獲得した」と評価。今回の交渉ではRBライプツィヒやローマも関心を示していたが、ストラスブール側の要求額(一部報道では7000万ユーロ)に折り合えず、ミランが競争を制した形だとされる。
5000万ユーロは妥当か――割れる専門家の評価
移籍金については報道によって違いがあるものの、固定で4500万ユーロ以上で、これにボーナスや転売時の分配金なども加わり、総額で6500万ユーロ規模の取引とされている。
『カルチョ・エ・フィナンツァ』は、会計面での試算を伝えた。契約期間5年、年間の減価償却費は1000万ユーロ程度、年俸は報道により300万〜400万ユーロ(手取り)とばらつきがあり、これらを合わせた年間の会計インパクトは1500万〜1700万ユーロと見込まれている。この規模になると、モレイラはクラブ内でゴンサロ・ラモス、クリストファー・エンクンクに次ぐ高額選手になりそうだ。
こうした金額の大きさを受け、懐疑的な見方は少なくない。元ベルギー代表でアンデルレヒトのレジェンド、ワルター・バセッジョは『MilanNews』の単独インタビューで「ミランはお金を持ちすぎている。ナポリがクリバリをヘンクから獲得した際は700万〜800万ユーロだった。私には高すぎる、評価額が極めて高い」と述べた。同氏はモレイラの技術力自体は評価するコメントを残しているものの、この金額は高すぎるという見解だ。
『スカイ』の解説者ルカ・ゴッティも慎重な立場を示す。「良い選手だが、まだ決定的な飛躍を証明していない」という評価だ。
移籍金そのものへの疑問に加えて、チーム編成上の懸念を指摘する声もある。
『Calciomercato.com』は、ラモス、クリスティアン・プリシッチ、サムエル・チュクウェゼ、そしてモレイラと攻撃的なタレントが積み上がる一方で、守備陣や中盤の補強が伴っていないことに注意を促し、「点は取るが失点も多い」というパウロ・フォンセカ政権時代の課題が再燃するリスクを指摘した。
『コッリエレ・デッロ・スポルト』も「モレイラはレオン、ボヌッチ、インザーギを超えるのか」という疑問形の見出しで、ミラン史上の高額移籍ランキングの中に位置づけ、過去の高額補強が必ずしも成功してこなかった経緯との比較をしている。
それでも、肯定的に評価もある。
『スカイ』のフェデリコ・ザンカン記者は、「良い選手で成長の余地も大きい。アモリムのサッカーにはハマる補強だと思う」と評価。前出のビアンキン記者やロマーノ記者も、選手としての質そのものには高い評価を与えている。『MilanNews24』の論説は、モレイラの移籍そのものより、「機会を待つのではなく、欲しい選手に必要な金額を払う」というカルディナーレ会長の経営姿勢の転換を歓迎する立場を取っており、「最終的な評価はまだ早い」としながらも、これを正しい方向への一歩だと位置づけた。
セリエAの洗礼はこれから
バセッジョ氏が指摘するように、フランス・リーグ・アンとセリエAでは、強度も戦術理解の要求水準も異なる。ストラスブールでは低い位置での守備も多く求められていたモレイラが、イタリアでどのポジションを任され、どう適応するかはまだ未知数だ。攻撃補強という見方がほとんどだが、ペルビス・エストゥピニャンを構想外とした左ウイングバックとしても有用とみる分析もある。
UEFAヨーロッパリーグ登録リストの面では、モレイラは「外国籍」17枠の1つを占めることになり、ラファエル・レオンの放出動向とも絡んでくる。
なにより、トップクラブでの実績が少ない22歳の若手に5000万ユーロの投資をするのはイタリアのクラブにおいては異例中の異例で、だからこそ、この金額に対して懐疑的な見方が出ている。
数字が示す潜在能力、クラブが描く将来性、そして割れる専門家の評価——。懐疑と期待、どちらの声が正しかったかは、ピッチの上でしか証明できない。

