アモリム新監督の就任会見で見えたクラブの現在地と、現地メディアに広がる賛否両論
ミランは8日、ルベン・アモリムの監督就任会見を行った。この会見にはジェリー・カルディナーレも同席し、大きな注目を集めた。この「新体制」に対し、現地では期待と懐疑の双方が入り混じっている。
専門メディアは好意的
ミランの情報を専門的に扱う『MilanNews』は「ミランは変わった。少なくとも、まず第一にカルディナーレが変わった」と指摘。4年間にわたる失敗・失望、不確実性や疑念が残るなかで、クラブは過ちを認め、再出発を図る決意を固めたとする。レッドバードのトップが自ら意思決定、メディア対応、そして責任を引き受ける姿勢に転換したことを、概ね好意的に受けとめている。
アメリカ式「委任モデル」の失敗
カルディナーレはアメリカ式の「権限委任モデル」がミランでも機能すると考えていたが、それが完全な誤りであったことはこの4年間で証明された。
ヨーロッパ、とりわけイタリアにおいてはオーナーの存在が不可欠であり、トップが自ら実体として存在し、直接オペレーションに関わることが重要であると気づいた格好だ。
カルディナーレが「人生で最悪の経験の一つ」と感じている昨シーズンのような失態を繰り返さないため、現在の組織から曖昧な役職は排除された。
すべての選択と決定はカルディナーレの思考に帰属する。その思考をサポートするための組織が構築された。
アモリム・マネジャーへの全面支持
この新体制において、監督の立場は大きく変化した。
ポルトガル人指揮官は真のマネジャーとして位置づけられ、チーム構築の指示は新指揮官と彼を支えるディレクター陣から発信される。
ゴンサロ・ラモスやマリオ・ヒラの迅速な獲得は、これまでのミランの典型的な交渉スピードと比較しても、この新たなアプローチを証明しているとされる。
カルディナーレの考えでは、求める選手像が見つかり、予算の条件を満たしているならば、メルカートの期限ぎりぎりを待つ理由はなく、さっさと交渉を進めて獲得すべきだという方針だ。
一方で、予算は無限ではなく、移籍市場でのチャンスを機敏に捉える必要性や、既存スカッドへの注視も求められている。
アモリム監督は、就任会見でサムエル・チュクウェゼの復帰を明言するなど、若手やレンタルバック組を評価・判断する役割も担う。それらも踏まえてのマネジャーだ。
カルディナーレは、生え抜きのマッティア・リベラーリを取り戻せなかったことに大きなショックを受けているとされる。そういった帰属意識が高いはずの若手をみすみす逃すというのは、クラブの文化的な観点からも二度と繰り返してはいけない事案と受け止めているという。
イブラヒモビッチの役割
レッドバードにシニアアドバイザーであるズラタン・イブラヒモビッチは、ミランと一定の距離を置くとみられる。
カルディナーレは、イブラヒモヴィッチがはレッドバードのために働く外部コンサルタントであり、ミランの内部組織におけるいかなる部門も直接的な関係をもたないとしている。
依然としてカルディナーレの信頼は厚いものの、ミランという現場への介入は限定的になる見通しだ。
セリエA全体の成長
さらに、カルディナーレはリーグ全体の利益についても言及した。プレミアリーグが優位性を保つなか、イタリアのクラブが結束して海外放映権ビジネスなどで巻き返しを図る必要性を感じており、アメリカでの投資実績やノウハウをリーグに提供する意向があるとされている。
一方で懐疑論も根強い
カルディナーレが最前線に立つことで「明確な意思決定」がもたらされたとされる一方、イタリア国内の主要メディアからは、そのプロセスにおける「一貫性のなさ」を突く厳しい批判もある。
メンデスの影響力
『コッリエレ・デッロ・スポルト』のフランコ・オルディネ記者は、わずか数カ月の間での急激な方針転換に強い疑問を呈する。1月の時点では、現場からの補強要請に対して「予算がない」と拒否したにもかかわらず、6月にはゴンサロ・ラモス獲得のために7000万ユーロもの巨額を投じた矛盾を指摘し、「一体何が変わったのか」と、先月末に首を傾げたばかりだ。
さらに、この大型補強の背景には大物代理人ジョルジョ・メンデスの強い影響力があるとされ、同紙は「外部の強力な代理人に意思決定が左右されるリスク」についても警鐘を鳴らした。
「英国モデル」への懸念
新体制の目玉である、スポーツディレクター(SD)を置かずに監督へ権限を集中させる「英国型マネジャーモデル」についても、戦術的・構造的な懸念が根強い。
『スカイ』のペッペ・ディ・ステファノ記者は、「英国モデルはイタリアでは機能しないという前例がある」と指摘。ミランはわずか2年前に、ステファノ・ピオリ監督体制で同様の試みを行い、結果として失敗に終わったからだ。
アメリカ式の『委任モデル』が失敗した後に、イタリア伝統のSD制ではなく、あえて英国式の『マネジャー集約型』へ移行する選択には、構造的な懸念が残る。そもそも、この新体制発足そのものが、「外部からの『ノー』が続いた結果の妥協案に過ぎないのではないか」という冷ややかな見方がある。
新体制の成否を分けるもの
オーナー自らが前面に立ち、迅速な補強とアモリムへの全権委任でリスタートを切ったミラン。しかし、その足元には、二転三転したフロント人事の爪痕、イタリアの土壌に馴染むか不透明な英国モデルへの懸念、そしてファンとの亀裂といった問題が横たわっている。
カルディナーレの『新体制』が、成功への真の変革となるのか。それとも過去の過ちの再生産に終わるのか。その答えは、ミランというクラブのアイデンティティー再生だけでなく、セリエA全体の競争力にも影響を及ぼすだろう。
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