1月から狙い続けていた“本命”がセリエA開幕前に到着
インテルは8月21日夜、リヴァプールからカーティス・ジョーンズを獲得したと正式発表した。契約期間は2031年6月までの5年間。移籍金や契約条件の数字は記事の最後で触れるとして、まずはこの補強がクリスティアン・キヴ体制の中盤にとって何を意味するのかを見ていきたい。
プロフィール
- 氏名:カーティス・ジョーンズ(Curtis Jones)
- 生年月日:2001年1月30日(25歳)
- 出身地:イングランド
- 身長:185センチ
- 利き足:右
- ポジション:MF
- 前所属:リヴァプール
1月からの交渉、そして本人の強い意志
インテルがジョーンズを追い始めたのは今年1月に遡る。リヴァプールの評価額が高く、交渉は難航が予想されたが、フロントは夏を通して口説き続けた。
本人もまた、この移籍を強く望んでいたと読める動きを見せている。夏のプレシーズン期間中、ジョーンズは股関節の問題を理由にリヴァプールの練習とプレシーズンマッチを欠場し続けた。
実際には、生え抜きとして育ったクラブとほぼ決別寸前まで進めてでも、インテルへ加入することを望んでいたというのが実情とも言われている。インテルの公式SNS投稿に本人が「いいね」を残していたことも、その気持ちの表れとして報じられている。
もっとも、この補強は思いつきではない。7月の時点で当時のインテルの中盤はバレッラ、チャルハノール、ジエリンスキ、スチッチ、ムヒタリャンに加え、スタンコビッチとマソランという薄い陣容だった。ムヒタリャンとチャルハノールは、インテルでの最終年という見方が強く、フラッテージはラツィオへ移籍。遅かれ早かれ、ビッグネームの補強は必要だった。
主力たちに定期的に休養を与えられる、走力とテクニックを兼ね備えたMFとして、フロントは1月からジョーンズに狙いを定めていたという経緯がある。
特長
ジョーンズの強みはまず、複数のポジションをこなせるデュッティリタ(戦術的多用性)にある。リヴァプールでは中盤の複数ポジションに加え、必要に応じて偽9番や右サイドバックとしても起用された経験を持つ。ボールを持った際の技術、運ぶ力、プレッシャー下でも失わないボール保持能力も評価されている点だ。
一方で、リヴァプールでの8シーズンは公式戦228試合22得点にとどまる。複数ポジションでの起用を重ねてきた選手だけに、この数字だけで得点力を測るのは一面的かもしれないが、爆発的な得点源というタイプでないのは確かだろう。
参考までに、フラッテージはインテルでの3シーズンで公式戦122試合に出場し15得点を挙げた。
考えられる3つの起用法
ここが今回の補強の核心と言っていいだろう。ジョーンズは昨シーズンのプレミアリーグで34試合に出場したが、レギュラーの座を掴めたのは12月から終盤にかけての一時期に限られていた。アルネ・スロット監督下での出場機会の乏しさが、生え抜きクラブを去る決断を後押しした一因だろう。
インテルでの起用法としては、大きく3パターンが想定されている。
1つ目は、バレッラ、チャルハノールと並ぶインサイドハーフとしての起用だ。ラツィオへ完全移籍したフラッテージが空けた枠を、数字の上でも実質的にも埋める存在という位置づけになる。この場合、同じポジションを争うジエリンスキ、スチッチとの競争が生まれるそうだ。
2つ目は、イタリア代表として過密日程をこなすバレッラのバックアップという役割だ。フラッテージ以上の水準を保ちながらバレッラに休養を与えられる存在として計算できる。
3つ目は、右サイドでの起用だ。本職ではないが、リヴァプール時代にも経験がある。ジェド・スペンスのインテル適応が未知数で、ディウフはコンバートされたばかり、ルイス・エンヒキもローマ移籍の噂があることから、サイドの人員に不安が生じた際の保険としても機能する。
なお、レジスタの代役としては、ジョーンズは想定されていないという。その枠はアレクサンダル・スタンコビッチが将来的な後継候補として育成されている領域であり、住み分けは明確だ。
中盤の序列への影響
モンツァとの開幕戦で、キヴ監督は新戦力を先発で起用しない見通しだ。まだ加入して間もないこともあり、詳しい序列の変化が分かるのはこれからになる。
ただ、フラッテージの完全移籍によって空いた枠に、ジョーンズが実質的な後継として入る構図は明確だ。注目されるのはそのクオリティだろう。
昨年夏時点で、キヴ監督はフラッテージに多大な信頼を寄せていたとされる。しかし、小さなケガによる離脱などで期待に応えられない時期が続き、結果としてレギュラー組を脅かすほどの存在感はなかった。
ジョーンズがフラッテージ以上の結果を残した場合、インサイドハーフのローテーションがさらに流動的になることが予想される。
移籍金・契約条件
最後に数字を簡単に触れておく。移籍金は3200万ユーロに加えボーナス500万ユーロ、さらに将来の転売時の一定割合をリヴァプールに還元する条件が付く。契約期間は2031年6月までで、推定年俸は手取り350万ユーロだ。
『カルチョ・エ・フィナンツァ』によると、2026/27期の決算への影響は、選手登録権の償却費640万ユーロと人件費(税込)648万ユーロを合わせて、合計1248万ユーロと見積もられている。
タンクレディ・パルメリ記者は、この移籍金を、ナポリがスコット・マクトミネイに投じた3000万ユーロと同種の「契約状況ゆえに本来の価値より高く払った買い物」と評している。
中盤の多様性という点では、フラッテージが抜け、スタンコビッチが育成途上にある陣容に、メッツァーラでもサイドでもこなせる駒が加わった意味は小さくない。
シーズン序盤からいきなり主力に定着するかは未知数だが、キヴにとって負傷者や過密日程時の選択肢が一つ増えたことは間違いなさそうだ。

