グアルディオラとピルロ、招へい失敗の全貌――7月11日から27日までに何があったのか
新時代の幕開けとなるはずだったプロジェクトが、わずか16日で終わった。決定打となったのは、ジョゼップ・グアルディオラの「ノー」と、アンドレア・ピルロを巡る”ロシア案件”だった。
イタリアサッカー連盟(FIGC)のジョヴァンニ・マラゴー新会長が招いたパオロ・マルディーニとレオナルドは、7月27日、就任からわずか16日で辞任した。この間に何が起きたのかを時系列で追う。
7月11日:マラゴー新体制の目玉人事
7月11日、新会長ジョヴァンニ・マラゴーは、パオロ・マルディーニをFIGCテクニカルディレクターに、レオナルドをアドバイザーに任命したと発表した。契約期間は4年。マラゴーはこの人事を「近年の失望の連鎖からナショナルチームを再生させるための革命」と位置づけ、「リスタートのため、2人のカンピオーネにテクニカルプロジェクトを託す」と語った。
背景にあるのは、イタリア代表が3大会連続でFIFAワールドカップ出場を逃しているという危機感だ。象徴性の高い人選である一方、実務レベルではFIGC内部に懐疑も残っていたとも報じられていた。
7月24日:本命グアルディオラのノー
マルディーニとレオナルドは、まずグアルディオラに狙いを定めた。イタリア代表再建のために、実績十分の世界的名将の招へいに動いた。
バルセロナに飛んで直接会談し、プロジェクトをプレゼンしたと報じられている。マラゴーも記者会見などで接触を認め、経済条件でも譲歩する用意があると公言していた。
グアルディオラ本人は、最終回答を出す前のインタビューで「心の面では何も欠けていない。人生のすべてをサッカーに捧げてきた。だからこそ今は、サッカー以外のことにも触れながら人生を発見し、幸せになってみたいと思わないだろうか」と語った。さらに「37歳で指揮官の道を歩み始め、今は56歳になった。もう若くはない。一度立ち止まり、自分の人生がこの先どうなっていくのかを見つめ直し、子どもたちや95歳になる父ともっと時間を過ごしたい」とも述べていたという。
7月23日から24日にかけての夜、電話でFIGCに正式な固辞が伝えられた。「経済的な問題ではない」という説明だったとされ、マルディーニも「ペップにとってお金は問題になっていない」と話していた。
7月25日:ピルロとの交渉
グアルディオラの正式な返答を受け、マルディーニとレオナルドは一気にアンドレア・ピルロに照準を定めた。当初プランBだったが、プランAに引き上げ、一時は発表寸前まで漕ぎつけたとも伝えられている。
だが、マラゴーは指導者としての経験値が不足しているとし、ピルロの招へいに懐疑的で、むしろブラジル代表のカルロ・アンチェロッティらの獲得を推していたとされる。
アンチェロッティは即座にノーと返事があったようだが、ピルロは前向きだった。
7月26日〜27日朝:政治問題化するピルロ案件、そして…
ピルロのイタリア代表監督就任が決定へ向かう中、問題が浮上した。
ピルロが指揮するユナイテッドFC(UAE)のオーナーは、ロシアの実業家セルゲイ・ロマキンとされる。加えてピルロ自身が2025年10月から、ロシア系ブックメーカー「Fonbet」のグローバル・アンバサダーを務めていた点が話題に上った。
さらに、利益相反の懸念も指摘された。ピルロの息子が所属するエージェント会社が、マルディーニ関連のエージェントと同じネットワークに属しているという点だ。
こういった騒動は政界にも波及し、イニャツィオ・ラ・ルッサ上院議長は「ロシアとの関係よりも、監督としての経験不足の方が問題だ」と述べたと伝えられている。与野党双方から賛否のコメントが相次いだとされ、ピルロの起用構想そのものへの疑問と、ロシア絡みの騒動を政治問題化することへの反発が入り混じった格好だ。
こうした反発の中、27日朝、ピルロ自身のSNSに動きがあった。
「昨晩、もはやイタリア代表監督の候補ではないと知った。自分のキャリアを通じて働いてきた国々の法律や、締結してきた契約を常に尊重してきた」
「この数日間の一連の議論は、苦い味を残すものだった。マルディーニとレオナルドの信頼と評価に感謝したい。2人の能力、誠実さ、イタリアカルチョへの愛はよく分かっている」
7月27日午後:マルディーニとレオナルドの電撃辞任
その日の午後には、チアゴ・モッタを軸にした折衷案が模索されたとも報じられている。しかし同日夜、マルディーニとレオナルドはマラゴーに辞意を通達。就任からわずか16日での出来事だ。
レーガ・セリエAのエツィオ・マリア・シモネッリ会長は、「彼らの辞任はテレビで知った。驚きはない、そういう空気だった。マルディーニは価値ある人選だっただけに残念だ」とコメントした。
この一連の流れを、現地はどう見ているか
ピルロとロシア系ブックメーカーとの関係は、単なる印象論ではなく、ナショナルチームの監督としての品格やコンプライアンスをめぐる問題として受け止められた。
もっとも、現地でより強く問われているのはピルロ個人以上に、そうした論点を事前に精査しきれなかったFIGCの統治能力だろう。全権を委ねるはずだったレジェンド2人に決定権がなかったことについても議論になっている。
マルディーニとレオナルドは改革を進めるために人選を進めていたはずだが、政治的な配慮やスポンサーをめぐる敏感な空気、そして上層部の判断の遅れが重なり、構想は短期間で頓挫した。
わずか16日で新体制が崩れた事実は、誰かが意図的に妨害したというより、組織そのものが同じ方向を向いておらず、大きな決断を持ちこたえられなかったことを示している。
振り出しに戻ったFIGC
16日間で幕を閉じた「新時代」の後始末を、FIGCがどう進めるのか。振り出しに戻った状態となり、次の局面が注目される中、ロベルト・マンチーニの招へいが発表された。
アッズーリは新たな船出となるが、この16日から学ぶべきこともあったはずだ。
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