またしても波紋を呼ぶPKジャッジ、“軽いPK”は定義できるのか
25日にセリエA第8節のナポリ対インテルが行われ、3−1でホームのナポリが勝利を収めた。
好調インテルはマルクス・テュラムの代役にアンジェ=ヨアン・ボニーを起用したほかは、ベストメンバーを起用した。一方で負傷者が続出するナポリは、前線にネレスを起用。最終ラインでは、サム・ブーケマを外してフアン・ジェズスがスタメンに名を連ねた。
Mad in Italy|イタリアの“遊び心”をまとうメガネとサングラスの哲学【イタリア企業とコラボ】序盤は比較的穏やかなスタートとなったが、インテルがチャンスをつくった。15分にはニコロ・バレッラのカットからラウタロ・マルティネスが決定機を迎えるも、シュートはGKヴァンヤ・ミリンコビッチ=サビッチに止められてしまう。
この試合のターニングポイントは29分に訪れた。ナポリはジョヴァンニ・ディ・ロレンツォがペナルティーエリアに侵入すると、後方からプレスをかけたヘンリク・ムヒタリャンに触れて転倒した。副審から報告を受けたマウリツィオ・マリアーニ主審は約10秒後に笛を吹き、映像で確認した上でPKを告げた。
このプレーでインテルはムヒタリャンが負傷して交代。PKを決めたケヴィン・デ・ブライネも右ハムストリングを痛めてプレー続行不可能となり、互いに予期せぬ交代もあった。
インテルは前半の終盤にチャンスをつくったが惜しくも決まらず、1点ビハインドのまま後半へ。
54分、ナポリがインテルディフェンスラインのギャップをついて加点に成功すると、インテルはハカン・チャルハノールのPKで1点を返すにとどまった。
66分にはナポリがザンボ=アンギサのゴールでリードを2点とし、本拠地マラドーナで快勝。前日の試合でピサと引き分けたミランを抜いて、首位に浮上した。
PKジャッジがまたしても議論に
試合後、まずメディアのマイクの前に立ったのは、インテルのジュゼッペ・マロッタ会長だった。『DAZNイタリア』に対して、「私がここにきたのは、このシステムに対して、私なりの貢献をしたいと思ったからだ」と切り出し、次のように語った。
「ナポリがラスト20分の戦いぶりで勝利を妥当なものとしたのは確かだ。その上で、PKのシーンは試合のバランスを左右する決定的な要素だったと言いたい」
「副審の判断からだった。映像でみれば分かるが、主審の位置は非常によかった。あれ以上のところはなかっただろう。しかし、6秒立ってから副審の判断でPKが取られた。VARが介入すべきシーンだったと思う」
「繰り返すが、ナポリは最後の30分で勝利に値するプレーをした。我々の選手たちは全力を尽くした。勝者を称えるから、結果に大きな議論の余地はない。ただ、PKの判定は単体で評価すべき事象だ。(審判委員長のジャンルカ・)ロッキは『もう軽いPKはやめよう』と話していた」
「あとは皆さんで判断してほしい。(審判解説の)マレッリさんも、あれはPKじゃないと言っていた。我々は“軽いPK”とは何かを明確にすべきだろう。私は主審が判断の中心にいるべきだと思う。30メートル離れた副審の判断に主審が左右されてはいけないと思う」
コンテの矛先はキヴへ?
その後、ユヴェントスのアントニオ・コンテが『DAZNイタリア』のカメラの前に立ち、マロッタ会長の発言に触れた。
「インテルは、何かあればすぐにマロッタや他の幹部を出してくるが、ナポリでは私が出てきている。チームは自分たちがなぜ負けたかを正しく評価しなければならない」
「マロッタはいまは会長で、そういう発言を彼がするのはどうなのかと思う。もちろん、ディレクターとしての彼をリスペクトしているが、こういうことは試合に関わった人間に任せるべきだ。私は幹部が出てきてコメントするようなことをさせなかった。本来監督が言うべきことを奪う。私は幹部に父親のように出てきてほしいなんて頼んだことは一度もない」
「監督と一緒にピッチに立った者しか分からないことがある。私はいつだって自分の力で戦ってきた。こうした“代弁”のようなやり方はどうだろうね。まあ、彼らのやり方なのだろう。私は構わない」
キヴは反論「私は多くの人が慣れているやり方と違う」
インテルのクリスティアン・キヴ監督は、コンテ監督の発言に記者会見で反論した。
「クラブが自分たちにとって正しいと考えることをするのは当然の権利だ。さが、私は監督として、一貫性をもって、ここに来て文句を言うことは決してしない。なぜなら、私は自分の尊厳と、多くの人が慣れているのとは違うアプローチを持っているからだ」
そして、自身のやり方を貫き、試合内容を振り返った。
「私は試合の話をする。まずは、前半に見せた好パフォーマンスに触れたい。先制されたあとも、良い反応ができていた。後半は追いつきたい気持ちが前面に出てバランスを欠いた」
「2点差に広がったあとも挽回の意志はあったが、相手ベンチとの口論により、無駄なエネルギーを消耗してしまった。そこから冷静さを欠き、試合をひっくり返すことができなかった」
特にナポリの2点目はインテルらしさがなかった。
「まさに無駄なエネルギーの浪費だった。試合の流れを理解しなければならなかった。2失点目の場面では危機を察知する感覚が欠けていた。我々は人数をかけて囲んで構築していたが、スピナッツォーラのあのボール一本で不意を突かれ、マクトミネイの抜け出しに対応できなかった。その後の反応も遅れ、3点目は冷静さを失った結果だった。スローインからあんなに簡単にやられてはいけない」
コンテvsラウタロ・マルティネス
この試合では、60分すぎに起きたラウタロ・マルティネスとアントニオ・コンテ監督の衝突も注目されている。
キヴ監督は「何が起きたか知らないし、興味もない。だが、選手たちには相手ベンチとの口論で無駄なエネルギーを使うなということは伝えるつもりだ。我々は自分たちの集中を向ける先をカルチョに向けなければいけない」と語った。
コンテ監督は「こういう試合では、そういうことも起こる。インテルでは私は10年ぶりにスクデットをもたらした。ユヴェントスが9連覇していた中でのことだ。私にとってそれが何を意味するかは、あなたたちも分かっているはずだ。インテルでの経験には良い思い出しかない。ラウタロは素晴らしい選手だし、人間的な部分では私もそこまで深くは知らなかったかもしれないが、彼の成功を願っている。それで十分だ」と述べた。

