「インテル全体を沈めかねないリスク」
イタリア代表を指揮するルチアーノ・スパレッティ監督の自叙伝『Il paradiso esiste… Ma quanta fatica(天国はあるけれど…たどり着くまでが大変だ)』が5月6日に発売された。200ページにわたる本の中では、インテルを率いた時代についても触れられており、『FcInterNews』が取り上げた。
スパレッティは2017年夏から2シーズンにわたってインテルを指揮した。セリエAでは2シーズン連続で4位に終わり、現在の成功の土台を築いた時期と言える。
そのチームでキャプテンマークを巻いていたのがマウロ・イカルディだった。2017/18シーズンは29得点を記録して得点王となったが、翌シーズンは不振に陥り、2019年2月には主将の座をおろされ、サミル・ハンダノビッチがあとを引き継いでいる。
スパレッティは「インテルで本当に危機的だったのは、主将の妻ワンダ・ナラがテレビでマウロのチームメートについて、言うべきでないことを語ったときだ」と語り、当時を振り返った。
「彼女はマウロの代理人だったが、同時に妻でもあった。それは破壊的だった。翌朝、何人もの選手が私のオフィスに来て、この件について話をしに来た。その中にはハンダノビッチもいた。彼は揺るがぬ男で、鉄のような人格の持ち主だ。何もなかったふりをすることも、単に壊れたものをつなぎ合わせることもできなかった。大多数のティフォージは理解してくれ、私を支えてくれた。私がロッカールームをまとめられないとか、スター選手を扱えないという批判は、これまで以上に不当で根拠のないものだった」
さらにスパレッティは続けた。
「我々のカピターノの弱点はワンダという名前だった。そして、それはグループ全体を沈めかねないリスクだった。私はそれを容認できなかった」
「あのときマウロはカルチョ的に難しい時期を過ごしていて、物事は彼の思うようには運ばなかった。いつものようにゴールを決めることができていなかった。彼女は『もしイカルディにもっとゴールを決めさせたいなら、彼を助ける選手を補強する必要がある』と発言した。要するに、もっと良い選手をそろえるべきだということだった」
「耐え難い。まるで爆弾だった。ロッカールームで戦争を避ける唯一の方法は、マウロ・イカルディの謝罪だった。しかし、それは決して届かなかった」
「翌日、私はカピターノに、全選手の前でワンダ・ナラの発言について説明するよう求めた。何らかの形で正当化してほしかった。ほかの選手たちへの最低限の敬意だと思ったからだ。マウロは、『話したのは妻としてのワンダではなく、代理人のナラであり、彼女はその立場で話しただけだ』と答えた。もう状況を収拾するのは不可能だった。どうにもならなかったよ」
「私は彼に二言三言伝え、キャプテンマークを取り上げ、ハンダノビッチに託すしかなかった。クラブの同意はあったが、それは沈黙の同意だった。彼はそれをひどく、非常にひどく受け止めた。結局、チームを失わないために、私はイカルディという人間と選手を失うことになった」