セリエA最優秀DFの去就が決着
ブレメル争奪戦に決着がついた。最終的に2021-22シーズンのセリエA最優秀DFを獲得したのは、ユヴェントスだ。長く続いた騒動を振り返ってみよう。
昨季ブレーク、1月のメルカートから話題に
ブレメルがメルカートで話題になり始めたのは、昨年12月だった。シモン・ケアーの負傷によりミランが後釜としてリストアップしたことが報じられている。それからインテル、ユヴェントス、チェルシーなどの関心が伝えられるようになった。
1月の騒動のあとで残留が決まったブレメルは、2月2日にトリノとの契約を2024年まで延長。これが今夏のカギを握る要素になったことは後述するとして、ひとまずトリノでキャリアを続けることが決まった。
インテルがブレメル個人と合意も…
2月からシーズン終了にかけて、ブレメル獲得に近づいていたとされるのはインテルだった。4月にはインテルと合意に達したと一部で報じられており、水面下で交渉が進んでいることは間違いない様子だった。
ただ、インテルはシーズン終了後もなかなかブレメル獲得をまとめることができなかった。インテル主力センターバックの放出が進まなかったことが大きな要因だ。さらに、インテルが駆け引きに敗れた感も否めない。
各報道によると、前述の契約延長には、一つの重要な項目があった。2023年1月に発動する契約解除条項だ。ブレメルは契約延長の際、2023年になると1500万ユーロで一方的に契約を解除できる条件を付けたと言われている。つまり、今夏に移籍しなければ、ブレメルは格安で他のクラブへ移れるということだ。
この条件については、5月頃から報じられるようになり、契約延長のタイミングと合わせて合点がいく話になっていた。それまでインテルが市場価値とかけ離れた格安オファーを用意していることが報じられていた(例:1500万ユーロ+ディマルコ、2000万ユーロetc.)が、選手側の合意を取りつけた上で冬の契約解除条項のことも材料にしているとしたら、超特価でブレメルを迎えることができるとしたり顔だったとしても不思議ではない。
だが、このインテルの筋書きはあっという間に崩れ去った。
ユヴェントスが乱入
インテルにとって最大の誤算は、マタイス・デ・リフトのバイエルン・ミュンヘン移籍だ。
デ・リフトはイタリアでの経験に見切りをつけて今夏の移籍を決断。結果、バイエルンへ行くことが決まった。ユヴェントスはその後釜にブレメルを選んでいる。
この動きを察知したインテルは、急いでブレメルの取引をまとめにかかり、3000万ユーロ+ボーナス500万ユーロ+チェーザレ・カザデイのレンタルという条件を用意。当初の想定をはるかにオーバーした条件である。だが、デ・リフト放出で予算に余裕があるユヴェントスは、インテルのオファーの翌日に4100万ユーロ+ボーナス900万ユーロという圧倒的なオファーを出した。ブレメル本人に対しても600万ユーロの年俸を用意し、選手側の合意も得て電光石火の大逆転。20日にメディカルチェックが始まった。
ブレメル争奪戦の勝者は…?
長い間狙っていたブレメルを逃したインテル。そのダメージは小さくないが、これによりミラン・シュクリニアルの残留・契約延長というストーリーも生まれている。財政面はクラブの問題として、強いインテルを見たいティフォージからすれば、シュクリニアルの残留はもちろん歓迎だろう。
また、争奪戦でインテルを出し抜いたユヴェントスが勝者なのかと言えば、それもまだ分からない。2021-22シーズンの活躍に疑いはないとしても、ブレメルに最大5000万ユーロの移籍金と年俸600万ユーロの価値があるかは、今後の活躍を見なければ判断できないことだ。
即戦力を求めるあまり、好条件の複数年契約でビッグネームを獲得した結果、この夏の“処分”に苦慮しているクラブが目の前にいることも忘れてはいけないはずだ。
ブレメルの取引で現時点で勝者がいるとすれば、それはトリノである。格安で手放す危機に瀕しながらも国外からのオファーを匂わせるなどして機会を待ち続け、最大限の条件を引き出した。アトレチコ・ミネイロから獲得した際の移籍金が580万ユーロとされているが、ユヴェントス移籍で最低でも4100万ユーロが手に入るわけで、ウルバーノ・カイロ会長が最高のビジネスをしたことは間違いないだろう。