先発を外れた絶対的主力たちが仲間を軽視?
ミランは8月31日に行われたセリエA第3節でラツィオと対戦し、2−2の引き分けで試合を終えた。ここまで未勝利のミランは、ラツィオ戦でも苦しんだが、劣勢から勝ち点1を手にしたのはポジティブな要素と言えるかもしれない。しかし、この試合では、これまでのように試合内容ではなく、休憩中の行為が話題となった。それがラファエル・レオンとテオ・エルナンデスのクーリングブレイク騒動だ。
背景
クーリングブレイク騒動が起きる前に、今季のラファエル・レオンとテオ・エルナンデスについて理解しておく必要がある。開幕からの2試合でミランのパフォーマンスはファンでなくとも悪い意味で驚くようなもので、パウロ・フォンセカ監督への批判はもちろん、ラファエル・レオンとテオ・エルナンデスも低調なパフォーマンスで酷評された。
ミラン最大の課題は失点の多さにあるものの、これは攻撃の選手たちのプレスが効いていないことにも原因があり、フォンセカ監督はチーム全体の問題と指摘していた。ラファエル・レオンは攻撃偏重だが、得点を奪っているわけではないともいうのも問題視されていた。
アントニオ・カッサーノは第2節を終えたあと、Twitchの番組でラファエル・レオンは「問題」と断言。「バルセロナのときのロナウジーニョは、守備時にチーム全体が彼を攻撃に集中できるようにしたけど、彼がそうしたいなら常に決定的でなければいけない。でも、彼はゴールの決め方を知らないし、サッカーを理解していない」と述べた。
さらにテオ・エルナンデスについても、「移籍したのか、それとももっとカネが欲しいのか。この2試合、彼のせいで失点している。(トリノ戦のドゥバン・)サパタのゴールは彼のせいで、パルマ戦は2失点とも彼だ」と酷評していた。
カッサーノの意見は的外れという意見も多い中、今回は多くのミラニスタが共感していた様子だ。
ラツィオ戦でベンチスタート
こういった非難の声が続く中、ラツィオ戦ではラファエル・レオンとテオ・エルナンデスが先発から外れた。開始早々に先制したミランだが、後半に逆転を許すと、70分にミランは4枚替えを敢行。ここで2人も入った。そして、その2分後にラファエル・レオンがゴールを決め、すぐに自身の力を証明している。
しかし、ここでクーリングブレイクが入ると、両チームの選手がベンチに集まったのに対し、ラファエル・レオンとテオ・エルナンデスはバックスタンド側のタッチライン付近で2人きりに。ベンチに戻る素振りをみせなかった。この異様な光景は、すぐにイタリアで注目され、メディアもSNSも話題にした。その結果、2−2で試合を終えたあとも、ラファエル・レオンの得点そっちのけでこの話題が続いている。
ミラン側の主張
パウロ・フォンセカ監督
「何の問題もないし、テオがすでに説明しているだろう。問題をつくり出す必要はない。今週、私は選手たちと話をしたが、彼らは選択を受け入れていた。問題は全くない。私は集中していた。彼らがあっちにいたことには気づかなかったが、テオが説明していると思う。問題がないところに問題を生み出さないようにしよう。私は言い訳をしないし、現時点で問題はない」
テオ・エルナンデス
「僕たちは入場してからまだ2分しか経ってなかった。だからクーリングブレイクは必要なかったんだ。チームや監督に対して何かあるわけじゃない。本当に必要なかった。でもまわりはいろいろと言うし、ウソを言うこともある。僕とラファは常にチームのために尽力しているし、それが大事なんだ」
解説者やOBはそろって苦言
アレッサンドロ・コスタクルタ
「テオとレオンは、入ったばかりで必要な指示は受けていたのだろう。しかし、彼らがフォンセカがもとへ行かなかったのは異常だ。監督から離れていたことで何らかの論争を引き起こすと考えなかったことも異常だ。今はそのようなことは必要ない」
ファビオ・カペッロ
「これはほかの選手たちへの敬意の欠如だ。つまり、ほかの選手をプレーする価値がないと見なしていることになり、それはリスペクトに欠ける。私が監督だとした厳しく対処していた事象だ。常にグループやチームのことが語られるがこのような行動は、『自分は常にプレーすべきで、ほかの選手はいつもベンチであるべきだ』と言っているのと変わりない。彼らが重要な選手であることは確かだが、そうだということをきちんと証明するべきだ」
「まるでこどものように足を踏み鳴らして、駄々をこねているようだった。解決できる状況か? (監督のパウロ・)フォンセカがチームを掌握し続けたいなら、彼自身がこの問題を解決しなければいけない。そして、選手たちに従わせる必要があるだろう」
ジュゼッペ・ベルゴミ
「ひどいシーンだった。レオンは成長したと私が言ったのは、たった1カ月前のことだね。、外された途端にこのような行動を取るなんてね。チームへの愛着はどこにあるのだろうか。本当にひどいシーンだ。2人は完全に反対側にいて、大きな距離を取っていた。ローマでのフォンセカは変化をもたらし、チームに別の安定感を与えました。状況をもっとよく理解するべきだ。ミランはあまりにも危険にさらされている。でも、まだ時間はあるね」
パオロ・ディ・カーニオ
「私の考えでは、恥ずべきことだ。私なら『おまえたちは仕事終わりにフットサルをしているわけではない。ここはミランだ』と言うだろう。1人はカピターノを務めることもあるね。それなのに何をしているんだ? チームメートは彼らの態度で、自分たちが軽んじられたと感じたことだろう」
アンドレア・ストラマッチョーニ
「クラブのイメージにとって良くなく、チームの調和に問題があることを示している」
ファビオ・カンナヴァーロは擁護
「話が大きくなりすぎて、本当の問題が見えなくなっているように思う。彼らは交代で入ったばかりで、のどが渇いていたわけではないだろう。それに、もし監督が彼らに話があったなら、呼び寄せていただろうし、それで十分だったはずだと思うけどね」
ミランは処分せず
『コッリエレ・デッラ・セーラ』が1日に伝えたところによると、ミランはこの件でラファエル・レオンとテオ・エルナンデスにペナルティーを科さないことを決めたとのこと。
多くのミラニスタが、スタートダッシュに心配したチームを心配している。パウロ・フォンセカ監督の戦術浸透が遅れているだけであればそのうち結果は出るかもしれないが、OBたちが指摘するように、控え選手たちが軽視されていると感じているようであればチーム一丸で戦うのは難しく、問題は長引くかもしれない。ファンは、ラファエル・レオンとテオ・エルナンデスがこの不安を吹き飛ばすようなパフォーマンスをピッチで見せることを期待しているのではないだろうか。
●ミラン、ラツィオ戦まとめ:選手採点・コメント・マメ知識など