ラツィオの怒りは妥当なのか
セリエA第27節のラツィオ対ミランが1日、ローマのオリンピコで行われ、アウェーのミランが1-0で勝利を収めた。
大荒れとなった名門対決
チャンピオンズリーグのバイエルン・ミュンヘン戦を控えるラツィオ。マウリツィオ・サッリ監督はメンバーを固定しがちなタイプだが、この日はチーロ・インモービレを外してタティ・カステジャノスを起用するなど、一部メンバーを入れ替えた。
その中で立ち上がりから主導権を握ると、縦パスがうまく入ってミラン陣内に押し込んだ。ミランは後方からの組み立てに苦しみ、なかなか前線までパスが届かず。0-0で前半を終えた。
後半は怒とうの展開が待っていた。57分、中盤での競り合いでカステジャノスが倒れると、ボールを回収したルカ・ペッレグリーニがプレーを止めるように促したが、主審は笛を吹かず。クリスチャン・プリシッチにボールを奪われたペッレグリーニはファウルで止めて、2度目の警告で退場となった。
その後はオープンな展開となる。ラツィオにもチャンスがあったが、よりゴールに迫ったのはやはり数的優位のミランで、76分にラファエル・レオンがゴールを揺らすがオフサイドで認められず。その後もラツィオGKイヴァン・プロヴェデルの好守に遭い、スコアはなかなか動かなかった。
それでも88分、ミランはテオ・エルナンデスとラファエル・レオンの2人で左サイドを突破。ゴール前の混戦から途中出場のノア・オカフォーが決めて、ついに先制に成功した。
6分と表示されたアディショナルタイムでは、ラツィオが大荒れ。アダム・マルシッチが退場となると、ファウルを受けて相手を突き飛ばしたマッテオ・ゲンドゥージにもレッドカードが出て、ラツィオは8人に。もちろんアディショナルタイムで同点弾が生まれることはなく、試合は1-0でミランが勝利した。
ディ・ベッロ主審のジャッジは…
3人の退場者が出たラツィオは、マルコ・ディ・ベッロ主審の判定に大きな不満が残っている。
立ち上がりからその兆候はあった。ラツィオが攻め込んだ12分、ミランの守備陣が混乱。自分で処理しようと飛び出してきたGKマイク・メニャンにアレッサンドロ・フロレンツィが距離でバックパスをすると、メニャンが慌てて対応した勢いでカステジャノスを巻き込んでしまう。ラツィオはこれでPKを主張したが、ディ・ベッロ主審はファウルを取らなかった。
そして、57分にはペッレグリーニの退場があった。ペッレグリーニにも問題はあるはずだが、カステジャノスの顔にイスマエル・ベナセルの手が当たっていたことは事実で、即座にファウルを取っていれば、ラツィオとしては問題にならなかった。
ミランボールで試合が再開した際には、ピオリ監督がボールをラツィオに返すように指示したようで、これに気づいたサッリ監督が激怒。「ボールを返してくれるな、オレを怒らせるな!」と激高していたという。
その指揮官の言葉どおりというべきか、試合はその後混乱し続けた。
アディショナルタイムの2つの退場は、マルシッチが(おそらく)暴言での退場。フラストレーションが溜まっていたとしても許されないことだが、ラツィオからすれば、そもそもの原因がジャッジにあったと言える。ゲンドゥージについては報復行為というのには厳しいのでは、という意見があり、こちらもラツィオにとっては納得がいかないことだろう。
『スポルトメディアセット』のグラツィアーノ・チェーザリ記者は「ファウル36回で警告11回、退場3つ。ディ・ベッロは明らかに不十分だった」と述べた。『LaLazioSiamoNoi』は「ディ・ベッロ(bello=美しい)はまたディ・ブルット(brutto=醜い)になった。ひどすぎる」と酷評している。
試合後コメント
クラウディオ・ロティート(ラツィオ会長 / DAZNイタリア)
「エピソードについては話さない。こういった試合になると、システムの信頼性が疑わしくなる。そうなると、第三者に頼らなければいけない。こういった状況に終止符を打たなければいけない。実力で勝たなければいけない。今日、我々は考え得る全てについて限界を超えた。言葉ではなく、具体的な事実で回答を出さなければいけない」
「ディ・ベッロ? 彼がどこからきたのかは知らない。審判たちと関係を持つのは私の習慣ではない。レーガはもう第三者機関に管理される方が良い。もうシステムは信頼性が保証されていない」
ルカ・ペッレグリーニ(ラツィオ / インスタグラム)
「レッドカードをもらったことをチームとティフォージに謝罪する。次があったら、ボールをスタジアムの外まで蹴り飛ばしてやる。仲間の顔に血が流れたんだ。僕が試合を止めたというのでは、主審に伝わらなかった。スポーツマンらしくない方が試合に勝った。僕はこのグループを誇りに思う。僕たちは誇りを胸に試合に臨む」
ステファノ・ピオリ(ミラン監督 / DAZNイタリア、記者会見)
ペッレグリーニの退場
「審判は笛を吹かなかった。クリスチャンはアンチスポーツマンではなく、正しくプレーをしただけだ。そこにペッレグリーニがファウルをして止めた。試合を止めるべきだったのは外にボールを出せた彼か、主審だったはずだ」
アウェーで無失点
「最近のアウェーゲームは、あまりチャンスをつくられていなくても失点していた。我々には選手がそろっており、途中出場の選手もいる。グループはうまく機能している」
ダヴィデ・カラブリア(ミラン / DAZNイタリア)
「(プリシッチは)ピッチに倒れている選手がいることに気づいてなかった。それでペッレグリーニからボールを奪いにいった。プリシッチは僕がこれまでに会った選手でも最も素晴らしい選手の一人だ。彼の意図したことではなかった」
ノア・オカフォー(ミラン / DAZNイタリア)
「このゴールの意味は大きいね。チームを助けたかった。とても難しい試合だったからうれしいよ。僕にとってここから再びカンピオナートが始まることになるとうれしい。すごく激しい試合だった。前半はうまくいかなかったけど、後半に均衡を破れたね」
マメ知識
- ミランは今季、途中出場選手が13得点。これは欧州主要5大リーグで最多。
- ノア・オカフォーは途中出場のゴール数が今季のセリエAで最多タイ。ラウタロ・マルティネス、ルカ・ヨビッチと並んで4得点。
- 今季5得点以上挙げている選手でオカフォーは出場時間が最も短い(509分)。
- セリエAの試合で1チームから3人退場になるのは、2012年11月のパレルモ以来(対ボローニャ)。
- ラツィオはセリエAでミランに3連敗。3連敗以上は過去に7回で、前回は2008年から2009年にかけて。
- ラツィオはマウリツィオ・サッリ体制で初のセリエAホームゲーム2連敗。