守備を劇的に改善して、スクデットレースに生き残る
8日に行われたセリエA第28節のミラノダービーでインテルを撃破したミランは、首位との勝ち点差を7に縮め、スクデット争いにとどまった。インテル相手にシーズンダブルを達成したマッシミリアーノ・アッレグリ監督は改めて評価を高めており、各方面から称賛されている。
指揮官の掌握力と、欧州最高峰へ変貌した守備網
現在のアッレグリ・ミランの強さを語る上で欠かせないのが、ジャーナリストであるファブリツィオ・ビアシン氏も絶賛する「指揮官のマネジメント能力と戦術浸透力」である。同氏はダービー後、アッレグリについて「自身のサッカー観をチームに見事に伝達し、90分間の試合展開を巧みにコントロールしている」と高く評価した。判定に不満があっても安易な言い訳に逃げず、対戦相手の長所と短所を誰よりも深く理解し、手持ちの戦力すべての価値を最大化させるその手腕は、レアル・マドリーが関心を寄せるほどだという。
このアッレグリの卓越した手腕が最も色濃く反映されているのが、ミランの守備陣である。
パウロ・フォンセカとセルジオ・コンセイソンが指揮を執った昨シーズンのミランは、カンピオナート38試合で43失点(1試合平均1.13失点)を喫し、リーグ内で7番目の成績に甘んじていた。
しかし、アッレグリが戦術的バランスの改善を最優先事項に掲げた今シーズン、第28節終了時点での失点数はわずか20。1試合平均「0.71失点」という堅守を誇っている。これはイタリア国内のみならず、アーセナルやローマといった強豪を凌ぎ、欧州全体で見てもトップの数字だ。
守備の安定がもたらす「必殺の速攻」
『スカイ』の番組でMCを務めるファビオ・カレッサも自身のYouTubeチャンネルで、「アッレグリのピッチ上での徹底した訓練により、ディフェンダー陣は全員が別次元へと引き上げられた」と指摘している。
カレッサによれば、アッレグリはチームの守備ブロックを保護するために基本的には低い位置で構える戦略を採っているが、インテルのように裏のスペースを持たない相手に対しては、あえて重心を高くして相手のパスワークを封じるなど、極めて柔軟かつ的確な戦術を採用しているという。実際、インテル戦では珍しくハイプレスを仕掛け、多くの人を驚かせた。
この自陣で強固に構えて相手の攻撃をはね返す堅守があるからこそ、手数をかけずに相手ゴールへ迫る「速攻」がかつてない鋭さを増している。
この強固な守備があるからこそ、手数をかけずに相手ゴールへ迫る「速攻」が鋭さを増している。ボール奪取の瞬間に前線へ展開する形は、スペースがある状況で個の能力を発揮するミラン攻撃陣の特長とも合致する。下位チームの引いた守備に苦戦する場面が見られるのも、この速攻主体のスタイルゆえの側面と言えるだろう。
3バック個々の飛躍を証明する圧倒的なスタッツ
強固な組織を形成するにあたり、3バックを担う個々の選手たちの飛躍も見逃せない。シーズン開幕当初はミランの弱点とさえ目されていた守備陣だが、カレッサが「トモリ、デ・ウィンター、そしてパヴロヴィッチは全員が成長した」と語るように、指揮官の指導下で劇的な進化を遂げた。
事実、データサイト『Sofascore』のスタッツを2024/25シーズンと2025/26シーズンで比較すると、その改善は数字として如実に表れている。
例えばフィカヨ・トモリは、1試合あたりの平均評価点が昨季の5.39から今季は5.57へと明確に上昇している。守備の要となる指標においても、1試合あたりのクリア数が2.5回から3.5回へ、タックル数も1.8回から2.2回へと増加している。
また、カレッサが「アッレグリの指導でハイレベルなディフェンダーへと覚醒した」と名指しで絶賛するストラヒニャ・パヴロヴィッチは、対人守備において劇的な改善を見せている。1試合にドリブルで突破される回数が、昨季の0.9回から今季はわずか0.3回へと激減しているのだ。これは彼が1対1の対応において圧倒的な強さと安定感を手に入れた証左であり、クリア数も3.3回から3.5回へと増加している。
さらに、マッテオ・ガッビアのスタッツを見てもその進化は明らかだ。1試合あたりのクリア数が昨季の3.8回から5.5回へと大幅に跳ね上がり、空中戦の勝利数も1.9回から2.3回(勝率69.2%)へと上昇するなど、ハイレベルなパフォーマンスを発揮している。
新戦力のコニ・デ・ウィンターは、シーズン前半戦こそ適応に苦戦したが、冬に自信を手にし、いまでは欠かせない戦力となっている。
個の対応力とカバーリング能力の向上が基盤にあるからこそ、前線は攻撃に専念し、鋭いカウンターを繰り出すことが可能となっている。
“ネガキャン”に結果で反論
近年、アッレグリ監督の戦い方には、ネガティブな意見が相次いだ。その急先鋒として挙がるのが、アントニオ・カッサーノやダニエレ・アダーニといった、発信力を持った元選手たちである。
ユヴェントス時代から、つまらないカルチョの象徴として扱われ、アッレグリは過去の監督という指摘が相次いだ。
だが、アッレグリのキャリアを見ればその功績は明らかで、いまもイタリア屈指の名将であることに疑いの余地はない。
ミラノダービーでのシーズンダブルを達成したことで、一部のミラニスタはSNS上で「それ見たことか」と、カッサーノやアダーニに一矢報いたことを喜んでいる。
もちろん、シーズンダブルを達成したからといって、ミランがスクデットレースで劣勢に立たされていることは間違いない。それでも、ミランを短期間で立て直したアッレグリは、今なおイタリア屈指の名将であることを改めて証明した。
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