綿密な分析とチームがかみ合った完璧なセットプレー
インテルは2日に行われたセリエA第10節でエラス・ヴェローナを下した。この一戦の先制点の場面を3日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が深掘りしている。
インテルは16分、ハカン・チャルハノールのCKにピオトル・ジエリンスキがダイレクトボレーで合わせ、先制に成功した。
ジエリンスキは試合後、「練習で取り組んでいたプレーだった。アンジェロ・パロンボは本当にいろいろなリーグをチェックしていて、そこからヒントを得たものを僕たちも使っている。あのアシストをくれたチャルハに感謝しているよ、本当に素晴らしいボールだったね」と語り、準備の成果だったことを強調した。
会見ではクリスティアン・キヴ監督も次のように語っている。
「パロンボのアイディア? そうだ。私は最初その案に反対だった。うまくいかなければ、あのスピードでカウンターを食らって失点していたかもしれない。でも、我々には高いクオリティを持った選手たちがいる。だからこそ、こうした形にもトライする価値がある。アンジェロ、フィリッポ(・ロレンツォン)、そして、これを落とし込んでくれた選手たちの功績だよ」
フィリッポ・ロレンツォン率いる分析チーム
『ガゼッタ』によると、インテルのセットプレー研究は、コーチのパロンボとロレンツォン率いるアナリストチームに一任されている。
かつてレジスタとしてサンプドリアで活躍し、インテル在籍経験があるパロンボは広く知られた名前だが、分析チームのトップであるロレンツォンはそれほど知名度が高くない。ただ、実績は確か。イタリア代表のスタッフ経験があるアナリストで、2023年にはUEFAプロマスター講座をトップの成績で修了した人物だという。
ロレンツォンが率いる分析チームのステファノ・カステッラーニ、サルヴァトーレ・ルスティコ、マルコ・サヴォカは、イタリア国外のリーグの研究にも精力的で、ミケル・アルテタ監督のアーセナルやブンデスリーガのクラブからも戦術的なヒントを得ているという。
ボールに触れた2人以外が生み出した状況
改めてジエリンスキのゴールを振り返ると、インテルの分析チームがヴェローナの弱点を的確に突いていたことがよく分かる。
『ガゼッタ』によると、ヴェローナは相手CK時に6人が最後方を担当し、2人が高めの位置をカバー。さらに2人がペナルティーエリアのライン付近をケアするという配置を取っている。
インテルは、そのスペースを埋める2人をいかにチャルハノール側に引きつけるかに注目。彼の近くに2人の選手を配置して誘い出し、ゴール前には多くの選手を集めて密集を作り出した。その結果、中央のスペースが広大に空くこととなった。
ジエリンスキは、自分へのマークが緩いことを察知しながらも、それを悟られぬよう静かにポジションを取った。
ここまで計算通りに運べば、チャルハノールの正確なキックとジエリンスキの技術があれば、ゴールは当然の帰結となる。さらに、ゴール前でポジション争いをする選手たちが、まるでバスケットボールのスクリーンプレーのような動きを見せていたことからも、すべてが狙い通りだったことがうかがえる。
セットプレーの成功は、相手の配置だけでなく、キッカーの質、合わせる側の特性など、複数の要素が絡み合って生まれる。それらをまるでパズルのように組み合わせ、完璧にハマったのがこの一撃だった。だからこそ、キヴ監督や選手たちが惜しみない賛辞を送ったのも当然と言えるだろう。

