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ユヴェントス、得点力不足の原因は? 守備の安定と同時に発生した次の課題

対極にあるインテルとのイタリアダービーが迫る

ユヴェントスは27日に行われるセリエA第9節でインテルと対戦する。インテルが失点の多さに不安を抱える一方で、ユヴェントスは得点力が課題だ。『カルチョ・ダタート』が原因を分析した。

ボールを支配することで守備が安定

ユヴェントスは第8節まで終えて失点が1と鉄壁だが、得点は11となっている。『カルチョ・ドタート』はまず、チアゴ・モッタ監督の「慎重さ」に注目した。

2023/24シーズンにボローニャを躍進に導いたモッタ監督は、今シーズンからユヴェントスの指揮を執っており、ここでも変わらずに流動的なサッカーを展開。ポゼッションをしながら失点を抑えるという、イタリアでは珍しい概念を取り入れている。

ただ、過剰なボール保持の意識がユヴェントスの攻撃の低調に関係していると記事は指摘した。

ユヴェントスは選手間の距離を短く保ち、特に左サイドで1タッチ、2タッチでパスをつなぐことが多い。以下のライプツィヒ戦のシーンは象徴的なシーンだろう。

ライプツィヒ戦でのユヴェントスのパス交換

意図的に左サイドに人数をかけることで、数的優位を生み出すことが容易になる。仮にパス回しの中でボールを失ったとしても、すでに狭いエリアに人数が密集しているため、即時奪還もさほど難しくなく、これがユヴェントスの失点の少なさにもつながっている。

同メディアは、2017/18シーズン以降の相手のゴール期待値(被xG)をグラフにして紹介。17/18シーズンが0.6、18/19〜21/22シーズンが0.9で、22/23シーズンが1.0、23/24シーズンが0.7ときて、今シーズンは一気に0.3まで下がっている。

プログレッシブ・ディスタンス

被xGが低いことはポジティブなデータだが、攻撃の不振と無関係ではない可能性がある。『カルチョ・ダタート』は、次にプログレッシブ・ディスタンスにも注目した。

これはボールがゴールに向かって前進する距離を指す指標で、主にボールの前進の有効性や攻撃の推進力を判断するための統計だ。ユヴェントスはプログレッシブ・アクションが28%で、前進を伴わないショートパスを多用してボールをキープしていることがうかがえる。

以下の『カルチョ・ダタート』が紹介した画像は、縦軸がxGで横軸がプログレッシブ・アクションの比率を示している。

縦軸がPKを除いたxG、横軸がプログレッシブ・アクションの比率。ユヴェントスは左下に

ヨーロッパ5大リーグでユヴェントスよりもプログレッシブ・アクションが低いのは約27%のマンチェスター・シティのみ。インテルとパリ・サンジェルマンも約29%で大きな差はない。これを考慮すると、プログレッシブ・アクションの低さは必ずしも悪でなさそうだ。だが、ユヴェントス以外の3チームはいずれもxGが高いという明確な違いがある。

ユヴェントスは、圧倒的に攻撃の効率が悪いと言えるのかもしれない。

慎重すぎてxGが低い?

インテルやマンチェスター・シティやパリ・サンジェルマンといったクラブと比較して、ユヴェントスのxGが低い理由はどこにあるのか。『カルチョ・ダタート』は次に、対戦相手が、「ユヴェントスからボールを奪取するまで平均で何本のパスを許したか」というデータを紹介した。

これによると、23/24シーズンの1試合平均は11.4本だったのに対し、今シーズンは平均15.4本となっている。23/24シーズンの最多は2024年2月25日のフロジノーネ戦だったが、それでも平均14本で、今シーズンの水準を下回っている。

このデータは、ユヴェントスがよくパスをつないでいるという見方ができる一方で、対戦相手のプレスが緩く、ユヴェントスのパス回しに「食いついていない」ことの表れともとれる。引いて構える相手をつり出せないうちに、成功率の高い横や後方へのパス、いわゆる“外循環”を繰り返しても、相手の守備の綻びを生み出すことはできず、結果、相手の守備ブロックの内部に潜り込んだり、サイドにスペースを発生させることができていないという分析だ。

解決のカギは「後ろ」?

どうすればユヴェントスの攻撃はより相手に脅威を与えられるのか。そのカギは、3-0で快勝したジェノア戦後のモッタ監督のコメントにヒントがあるかもしれない。

指揮官は、「後方の選手が攻撃に加わることで、前線の選手がゴール近くでラストパスを受けることができる。ここは改善ポイントだ」と述べていた。選手個々がリスクマネジメントをした上でどこまで仕掛けられるかが重要だ。

左サイドであれば、ケナン・ユルディズが中にカットインしてゴールを狙うというのが1つの形だが、これはアンドレア・カンビアーゾらの追い越す動きがあって破壊力を増す。そこをサポートする戦術の整備に取り組んでいるはずで、後方から飛び出す選手の判断も重要になる。PSV戦のユルディズのゴールが好例だ。

PSV戦でのユルディズのゴール

また、ピエール・カルルは10月2日のライプツィヒ戦まで、敵陣でのプログレッシブ・パス成功が常に5本以下だったが、6日のカリアリ戦と19日のラツィオ戦ではどちらも10本を記録しており、明確に上昇している。ある程度のリスクをおかしてもクサビを打ち込むという意識が出てきた証拠かもしれない。

モッタはすでに着手済みか

後方からの飛び出しはモッタ監督が語っているとおりで、カルルの縦パスについても指示があったことが想像できる。能力に疑問符が付いていた新戦力に自信を植えつけたところで、より積極的になることを要求した可能性はある。指揮官がプログレッシブ・ディスタンスという指標を意識しているわけではないかもしれないが、ボール支配がなかなかチャンス創出につながっていないという問題は認識しており、日々改善に取り組んでいるはずだ。

モッタ監督がこういう問題が起こり得ると想定していたということはないだろうか。パウロ・フォンセカ監督を迎えたミランを見れば明らかなとおり、チームに新しいスタイルを持ち込むのは容易ではない。モッタ監督は、まず「慎重」に守備を整備し、そこから次第に攻撃時のリスクを取ろうとしているのだとしたら、これから成熟していく可能性を秘めている。

イタリアダービーでユヴェントスがどんな戦いを見せるのか。いまから注目だ。

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