ベニテス、ガットゥーゾ、仲間、スタッフの気遣いが強さを生む
2014年から2022年にかけてナポリでプレーし、昨年現役を引退した元アルジェリア代表のファウジ・グラムが、『スカイ』のインタビューに応じた。この時期はイスラム教徒の選手たちのコンディションに注目が集まることに言及した。
「すべてのムスリムにとって、ラマダーンは喜びと浄化の月だ。ラマダーンの実践とプロスポーツの両立についてはこれまでにも多く語られてきたけど、僕の経験から言えば、この特別な期間中、ムスリム選手のパフォーマンスは低下するどころか、むしろ、向上することさえあると思ってる。その理由をこれから説明するよ」
グラムは、グラムは、かつてに比べてラマダーンに対する周囲の理解が深まっていると感じている。
「僕がフランスのサンテティエンヌでプロとしてキャリアを始めた頃と比べると、今は多くのことが良い方向に変わった。たぶん、欧州のトップリーグでプレーするムスリム選手が増えたのもあると思う」
「イタリアに来てからずっと、カトリック以外の宗教に対しても大きな敬意があると感じてたけど、今は西洋サッカー全体でムスリムの精神的・宗教的なニーズへの理解がさらに深まっている。クラブの配慮や運営も進化したし、選手、機関、ファン、みんなの意識も良い方向に変わってる。例えば、最近のUEFAチャンピオンズリーグの試合で、リール対ボルシア・ドルトムント戦の主審が、日没のタイミングで試合を中断して選手が水分補給できるようにした。あれは本当に美しくて、意味深い瞬間だった」
「宗教はムスリムにとって人生の中心であり、とても大切なもの。ラマダーンは神に一番近づける月なんだ。ラマダーンの間、僕たちは神から受けたものを再確認し、自分自身と向き合い、見つけ直す。そこに、身体的・精神的・霊的なバランスが生まれる。それがあるからこそ、僕の体感としては、この時期のムスリム選手のパフォーマンスが上がることもある。キャリアを振り返ると、ラマダーン中に自分でも驚くくらい調子が良かった時期があった。まるで機関車みたいに走ってて、トレーニングでも試合でもデータが普段の自分よりずっと良かったんだ」
イタリアでの成功は、ナポリの温かいサポートがあったからかもしれない。
「もうひとつ大事なのは、ラマダーンをやってない人たちとどう向き合うかってこと。それを説明するために、イタリアでの体験を話すよ」
「ナポリに加入したとき、監督はラファ・ベニテスだった。合宿がちょうどラマダーンと重なってて、ムスリムの風習として、この特別な時期を周囲に負担をかけずに静かに過ごしたいって気持ちがある」
「当時の僕はまだ若くて、今ほど自信もなかったから、クラブに『自分はラマダーン中だから他の選手と違う食事と時間で過ごす』って言い出せなかった。そしたら、ベニテスが僕をオフィスに呼んで、コーチングスタッフや医療チームも集めて、落ち着いて話してくれた。『クラブは君がラマダーンを快適に過ごせるよう全力でサポートする』と言ってくれたんだ」
「そのおかげで、僕の部屋には冷蔵庫まで運ばれてきて、本当に特別な配慮をしてくれた。周囲の人たちもリスペクトと共感を持って接してくれた。料理長は毎朝3時半に起きて、僕とカリドゥ(・クリバリ)のために料理を作ってくれた。申し訳なくて何度も断ろうとしたけど、頑として引かなかったんだ」
「日中は、チームメートの多くが僕の前で飲み食いしないように気を遣ってくれた。そんな小さな気遣いが大きな意味を持つ。心に残るし、クラブやユニフォーム、監督、仲間に対する感謝と愛着を生む。強い感情ってやつだね」
「それが結果的に、個人の、ひいてはチーム全体のパフォーマンス向上につながる。ナポリでは本当に運が良かった。どの監督も『人間として』『ムスリムとして』『サッカー選手として』自分を最大限に表現させてくれた。ガットゥーゾなんて、練習時間まで変更してくれた。ああいうことは絶対に忘れない。時間が経てば経つほど、そういう経験が大きな違いを生んでくる。人生でもスポーツでも、成功のカギになるような、壊れない絆ができる」